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月刊誌「改革者」2008年8月号
「改革者」2008年8月号 目次
 

羅 針 盤(8月号)
                   長寿医療制度と地方分権

                          堀江  湛
              尚美学園大学名誉学長・政策研究フォーラム理事長


 後期高齢者医療制度の評判が悪い。福田首相は「説明不足で本当にまずかったと反省している」「保険証がまだ届いていない不手際がある」と謝って名称を長寿医療制度と変更したいと指示した。早速匿名の厚労省職員がブログで突然改称して保険証から役所の印刷物、所内の掲示まで変えさせるつもりか壮大な無駄遣いだとやり込めた。しかしさすが厚労省の保険局長、これは愛称だとして、全国の自治体等に早速長寿医療制度(後期医療制度)との記述にして欲しいと通知したという。 どっちでもよいがここで問題にしたいのは都道府県毎に全市町村に広域連合を組ませてこれを保険者としていることだ。これまでひとつの市町村では支えきれない事業等を近接する市町村が一部事務組合を作って共同で処理してきた。消防、診療施設、小中学校や迷惑施設のごみ処理場、霊場等だ。さらに高額な負担が求められる事業を、歴史的経済的にも一体をなす地域圏の市町村が協力して事業を展開するというのが広域連合だ。 しかし四七都道府県のすべてが政令指定都市を含めて全市町村の参加する広域連合を組織して後期高齢者保険の保険者になるというのはいかにも不自然だ。それなら都道府県が保険者になればよい。元来都道府県の任務は広域行政の処理のはずだ。しかし都道府県には保険料徴収の手足がないし、引き受けても補助金が来るわけでもない。権限が増えるわけでもない。迷惑な話だ。もともと国民健保の保険者は市町村だった。後期高齢者の保険は弱小市町村では荷が勝ちすぎる。保険料の負担は国が四、都道府県、市町村がそれぞれ一ずつ全体で公費負担は約五割だ。それなら都道府県単位で広域連合を組ませろという厚労省の強い指導の結果だろう。 問題は広域連合にどうやって住民の意見を反映させるかだ。テレビでこの点の質問に厚労省は「広域連合には議会がありますから心配はありません」と答えていた。冗談ではない。法制上は議員は住民の直接選挙か市町村議会での選挙によるとしている。実際は議会の処遇人事として選任されている。今の広域連合の議員の選任は性質からいって住民選挙で行うのが筋だが、そういった都道府県があるとは聞いていない。国はもちろん都道府県や市町村にとっても地方分権は所詮お題目に過ぎないのか。
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