人口減少社会と民主党政権の任務
堀江 湛
慶應義塾大学名誉教授・政策研究フォーラム理事長
鳩山内閣になって政権交代と政治主導を実感させられるのが副大臣と政務官の活躍だ。
大臣のあいさつ代読が仕事だった自民党時代とは目を見張るような変わりようだ。
ただし首相をはじめ閣僚が報道陣の誘導にサービス精神からついしゃべってしまうまだ熟していない思いが、
内閣不統一あるいは首相のリーダーシップ欠如との印象を国民に与えている。
米国のホワイトハウス報道官にならい首相や大臣のぶら下がりは止めて、
基本的には内閣、各省庁の任用するマスコミ界折り紙つきのベテラン報道官に十分な配布資料等を準備させた上で記者会見を任せてはどうか。
民主党には成長政策がないという批判が多い。決してないわけではない。
マニフェスト作成の段階では議員のイニシアチブのもと様々な委員会で突っ込んだ専門的検討がなされたようだ。
しかし具体的選挙のマニフェスト化の中であれもこれもと膨らんで、スローガン化した個別政策の羅列になってしまった。
既に日本の生産年齢人口は減少に転じている。どこかで少子化の進行を止めて、人口増に転じなければならない。
これに成功したとしても生産年齢人口の増加が生じるのは少なくも一五〜二〇年先だ。
女性の社会進出も随分進んだ。就業者全体では四四%が女性だ。
ただし一週間の就業時間でみると週三五時間以上働くフルタイムは二四%だ。
しかもフルタイムの管理的職業従事者は全体の僅か七%に過ぎない。女性の大半が男性の補助的仕事に従事しているわけだ。
女性の大学進学率も短大を含めれば男性に数パーセント差に迫った。
もし女性が男性同様フルタイムで管理的仕事に就くようになれば人口減少分を補う十分な力になる。
誰でもいう保育園の待機児童解消等の前にもっと根本的な問題がある。それはわが国のビジネス慣行の抜本改革だ。
米国でもEUでも午後五時になると社員は一斉に退社する。
他社との折衝はランチョンで行われる。夜の得意先との折衝、接待がある限り子どもを持った女性には管理職は勤まらない。
延長保育や制度上だけでなく実際病児を預かる病院施設の整備も不可欠だ。
大企業といえども定年後の再就職の世話はほとんどしなくなった。米国では定年制は憲法違反だ。
介護もさることながら、平均寿命の延長に対応する定年延長や、
社会的に再就職の道を開くことによって高齢者にも人口減少を阻止する戦線に参加を求めることが必要だ。
それが介護に対する社会的負担の軽減にも繋がる。
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