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月刊誌「改革者」2010年8月号
「改革者」2010年8月号 目次
 

羅 針 盤(8月号)
              菅内閣 マニフェスト破りの代償

                          堀江 湛
              慶應義塾大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長


  参院選で民主党は無残な敗北を喫した。 参院選を目前に鳩山首相と小沢幹事長の辞任という高価な代償を払って発足した菅内閣は一旦は目覚しい支持率の回復を示した。 しかし首相は鳩山前首相が在任中は上げないといい続け、マニフェストのどこにも触れてない消費税上げを、 こともあろうに財務省べったりの自民党谷垣総裁年来の主張、一〇%引き上げを前提に選挙後超党派で検討しようと公言した。 小細工が過ぎた。党内議論も抜きの突然の変身に有権者が消費税の賛否にかかわりなく、 首相の言動に胡散臭いものを嗅ぎ取り、瞬時にして民主党や中間派の支持を失った。 消費税はあまり知られていないが、現在五%のうち一%は地方消費税という名の地方の取り分だ。 専門家の推計ではさらに一%程度が地方の一般財源である地方交付税の税源にもなっている。 消費税に触れるのなら、マニフェストに謳っている地域主権にもとづいて消費税五%を国の取り分三%、 都道府県消費税と市町村消費税の取り分をそれぞれ一%と三分割することを提案したらよい。 これならマニフェスト違反どころか、地方主権の推進と評価される。 財源がないという。しかし行政刷新会議によれば特別会計の総額は一般会計の約二倍近い一七六兆四千億に達する。 租税特別措置の整理削減をも含めて、さらに徹底的な事業仕分けを進めるはずではなかったのか。 概算要求に間に合わないといった脅しに屈してはならない。強い経済強い社会保障の実現は目的だが、 強い財政は手段ということを忘れないでほしい。蓮舫行政刷新大臣だけが頼りとは情けない。 議会政治は数の政治だ。 参議院の一人区は農村県が多く自民党の金城湯池だった。小沢前幹事長は連合幹部を帯同、全国行脚を重ね前回参院選でこれを見事ひっくり返した。
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