ドサクサでの連用制導入には反対だ
加藤秀治郎
東洋大学法学部教授、政策研究フォーラム副理事長
野田政権の動きからは、衆院選挙制度は公明党の協力で改正しようとの方向が浮かんでくる。だが連用制には疑問が多く、ドサクサで導入してよい制度ではない。
そもそもは一票の価値で、最高裁が「違憲状態」との判決を出したことに始まるが、そこに増税の動きが絡んで、拙速に傾いてきている。
最高裁判決の方は、小選挙区の部分に関わる話で、現行の区割を少し変えれば済むことだった。
しかし、増税で国民の理解を得たい野田内閣が、政治家自ら「身を切る」姿勢を見せようとして、議員定数の大幅削減を打ち出し、話が大きく変わってきた。
減らすとなれば比例代表制の部分を減らすのが簡単で、民主党は政権公約にあった比例の「八〇削減」の方針となった。
現在は一八〇で、公明党以下の中小政党はそこでのみ議席を得ているようなものだから、議席は半減となりかねず、単純な削減には絶対反対だ。
そこで浮上したのが連用制だ。ブロックの比例の議席配分にあたって、小選挙区で当選した分を引くような方法だ。
この方式だと、比例の議席は第一党にはまず回らない。第二党に少しだけ、そして第三党以下で山分けする方式とでも言えばよいか。
過去の得票で計算してみると、公明、共産、社民など、みな議席が今よりも増えるので、中小政党は乗り気だ。
野田内閣は「身を切る」ポーズを示せるし、中小政党の賛成で国会を乗切れるというのだろう。
連用制は、並立制と比例代表制の中間的な方式として、細川内閣の時、妥協策で浮上した経緯がある。
選挙制度の細部に詳しい成田憲彦・首席秘書官の案だったが、同氏は野田内閣でも内閣官房参与になっており、民主党内の議員集会で連用制を説いている。
他の国では採用されておらず、不自然な点が少なくない。
まず何よりも衆院総選挙での単独過半数が絶望的になり、連立政権が常態となる。要は公明党などに譲り過ぎなのだ。
反対の自民党から、政治家らしい鋭い批判も出た。
比例での議席を得られるよう、大政党は小選挙区で無所属として候補を立て、当選後に追加公認すると、比例での議席も確保できるというのだ。
選挙制度の専門家を自認していた私も見逃していた点で、脱帽だ。ドサクサでやるには、あまりにも重大な変更と言わなければならない。
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