離合集散を求めるよりは、持続させる意志を
谷藤 悦史
早稲田大学政治経済学部教授、政策研究フォーラム理事長
消費税増税法案をめぐって、与党や連立政権内部の離党、辞職、政権離脱が話題となっている。
中央政界の分裂騒ぎに乗じるかのように、地方政治集団を引き込んでの新党形成の動きもまたぞろ始まった。
こうした流れに、「動かない政治」が常態化し、政治的話題が乏しく、政治記事がマンネリ化して立ち枯れ状態にある政治ジャーナリズムが飛びついて、「政界再編か?」、
「総選挙が迫る」などと騒ぎ立てる。
いつか見た風景である。何度同じようなことが、繰り返されることか。
日本の政治や経済にとって、健全な財政は必須であろう。世界に向けて、「財政の健全化に向けて政治は舵を取る」というメッセージを提示することも大切である。
国地方を合わせて、直に一〇〇〇兆にも達しようとする債務を放置しておくならば、南欧諸国がそうであったように、世界の金融市場は、
国債格付けの引き下げを皮切りに牙をむいてくるだろう。
そうならないためにも、財政の健全化は大切である。
この状況は、広く認識されている。消費税の増税についても、与野党に広い合意がある。加えて、国民にも、何らかの増税が必要であるとの認識が浸透している。
共同通信二月の世論調査では、「消費税引き上げ」に「賛成」と「どちらかといえば賛成」という人は、合わせて四八・三%に及ぶ。
税制改革を進めるには、良い世論環境にあると言えるであろう。
最大のチャンスでもある。この状況で、税制改革を断念したなら、政治は「何もしない」、「何もできない」という思いを浸透させ、
「政治の無能さ」や「政治不信」を加速させよう。結果的に、日本の政治力をさらに削減することになる。
この環境が、何故に政党政治に反映されないのか。
一つの法案を巡って離合集散の問題が噴出するのも、政党の内部に信望する政治理念、政策について、深い合意がないからであろう。
目先の政治的利益だけを求めて、対処や対応の政治だけを繰り返し、安易に人を補充してきた結果でもある。マスコミの挑発に乗って、
政界再編や早期解散を行っても、新聞記事のネタを与えるだけで、問題の解決にはならない。
必要なのは、長期にわたって何を実現し、どのような戦略と手段でそれを達成するかのビジョンの構築と、それに対する深い関与ではないのか。
持続する意志も必要である。その出発は、マニフェストの原点に立ち返って、見直しを行い、党内部に深い合意を作り上げることである。
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