真の社会保障・税の一体改革を
大岩 雄次郎
東京国際大学経済学部教授、政策研究フォーラム常務理事
八月十日の参院本会議で消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法が採決され、民主、自民、公明三党などの賛成多数で可決・成立した。
現行五%の消費税率は平成二十六年四月に八%、二十七年十月に一〇%へ二段階で引き上げられる。
平成二十四年度の基礎的財政収支は、国と地方を合わせても約二六兆円の赤字となる見通しで、今後消費税率を一〇%に引き上げても、
借金依存の財政を早期に脱却できるわけではない。
内閣府の試算では、消費税率を一〇%にしても増加する社会保障費を賄えず、
メキシコで開かれた二〇カ国・地域(G20)首脳会議で財政収支の黒字化を国際公約にした三十二年度時点で、依然税率六%分に相当する一六兆六〇〇〇億円の赤字が残る。
政府は、民主党内の反対で削除したが、消費税増税法案の原案には一〇%超への再増税を示唆する追加増税条項を盛り込んでいた。
しかし、その前提となる歳出削減の取り組みは不徹底なうえに、財政再建への道筋も見えない。
増税による歳入増の使途すら明確でないだけでなく、従来の歳入のうち、今回の消費税増収に見合う分の使途にいたっては議論の俎上にすら載っていない。
少子高齢化が進展する中で様々な負担増は避けられないが、今回の消費税増税は、今なぜ消費税増税かという点で説得力に欠ける。
つまり、この一〇年間で、税・社会保障負担は実収入比で、既に二%増加しており、消費税換算で二%超の引き上げに匹敵する。
さらに今後も、復興増税、給与所得控除の縮減、扶養控除廃止、年金保険料引き上げ、健康保険料・介護保険料の引き上げが予定されている。
消費税だけに目を奪われると、誰がどれだけ負担しているかの実態を見失う危険がある。
さらに、岡田副総理の「消費税増税による所得再分配効果」を勘案したとしても、これらの勤労世代の実際の社会保障負担が軽減されるわけではないので、
世代間の不公平が緩和されるとは思われない。消費税だけではなく、税制全般の見直しが必要である。
抜本的な問題解決には、現状での所得再分配政策だけではなく、分配の源泉を拡大する経済成長により、勤労世代の所得増を実現することである。
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