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月刊誌「改革者」2012年10月号
「改革者」2012年10月号 目次
 

羅 針 盤(10月号)
                   橋下新党を論戦に引き出せ

                             加藤 秀治郎
                 東洋大学法学部教授、政策研究フォーラム副理事長


  九月十二日、橋下市長の「大阪維新の会」が国政進出を決め、「日本維新の会」を結成した。 国民の既成政党不信は強く、新党への期待は大きいが、政策は不明確で不安も大きい。 特に春の段階での政策集「維新八策」はひどく、私は「内容空疎」とまで評した。だがその後、エネルギー政策など、現実化の動きを見せた。 また、不安感を払拭するには、実績ある政治家との連携が重要ということで、自民との協力など、明確なシグナルを送り始めた。 逆に、野田・民主党政権は「原発ゼロ」を言い始め、エネルギー政策などでフラツキを見せている。 現実離れしたことは言わない姿勢が、支持者に安心感を与えていただけに、困ったことで、「維新の方が良いのでは……」と思い始めた人もあろう。 この辺りが今後の政治的焦点だが、いずれにせよ「維新」には政策の明確化を迫る必要がある。各党は脅えたり、擦り寄ったりするだけでなく、 「維新」を討論の場に引きずり出さねばならない。 マスコミも真価を問われる。 「新党」や「キャッチフレーズ」など、あの手この手での政治家の大衆操作に、利用される愚を繰り返していてはなるまい。 国民も、ムード的な新党騒ぎには懲りてもよい頃と思うが、そうならないのを見ると、ムードに弱い国民性と自覚するしかないか。 日本人の国民性と心得え、矯正に努めるしか救済策はないのだ。 テレビには多くを期待できず、最後の砦は新聞だ。 「維新」への期待感では、橋下氏のキャラクターの要因が大きいが、「スピード感」や「ケンカ上手」は、通じる世界と通じない世界がある。 それを国民に伝えるのは、マスコミの最低限の責務だろう。 「多数決の政治」では、最後には数が大事で、そのためには橋下氏とて妥協をしている現実は、もっと強調されてよい。 大半の小選挙区に挑むというのに、公明党が候補を出す九選挙区は別だという。 大阪市議会が、公明党の協力なしには乗切れないからだというが、それでも全国政党なのか?  国政ではこういう譲歩がもっと多くなり、「スピード感」など簡単に失われるのだが、支持者は承知しているのか?
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