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月刊誌「改革者」2012年11月号
「改革者」2012年11月号 目次
 

羅 針 盤(11月号)
                   日本維新の会の終わりの始まり

                             谷藤 悦史
                 早稲田大学政治経済学部教授、政策研究フォーラム理事長


  低迷と衰退を続ける二大政党を横目に、第三極作りがあわただしい。 つい先頃まで、地方の政党作りの運動であったものが、二大政党を離党した国会議員を巻き込んで、さらにまた分裂した政党との交渉を開始して、 いつの間にか国政を担う第三極作りの運動になってしまった。 「維新八策」と称しているが、その内実は皮相である。世界が、日本がどのような歴史状況におかれているのかの深い歴史認識もない。 はたまた歴史認識に基づく世界作りや国作りについての体系的な政策もない。 政策は世界作りや国作りの物語りでなければならないのだが、それらを物語ることもなく、 断片的で脈絡のない諸策を新自由主義の残滓とナショナリステックな言説で包み、新政策と称しているだけである。 その政治運動に、次期選挙の候補者選考として八〇〇人近い人が応募しているという。 さらに選考する人が、何年か前にわが国おいて新自由主義を声高に叫び、実践した経済学者であるという。それらの人々は、何を手掛かりに糾合し、 どのような国作りの物語を開始しようとしているのであろうか。一向に見えてこないのである。 そこにあるのは、議員という地位を占めたい、放棄された新自由主義の政策を復活させたいという私的動機だけではないのか。 そんな意図が見え隠れする。 閉塞する政治状況で、世論が揺れている。 明日が見えないから、少しばかり異なる試みに素朴な人々の期待が寄り添うと、「科学的」な世論調査がそれをすくい取って明らかにする。 加えてメディアが、世論調査結果を用いて「第三極」になりつつあると喧伝すると、空虚な試みが実態のあるものとして受け取られ広がる。 同じようなことが、何度繰り返されたことか。 国政を担う政党として実質化を図ろうとすれば、私的利益が衝突して対立し、大義なき政策も分解して、空虚な運動の本質が浮かび上がってくるだろう。 やがて人々の期待も低下して運動も終焉を迎える。 その兆しが、少しずつ見え始めたのではないか。 維新の会の、終わりの始まりが到来しつつある。 選挙を焦る必要はない。不安定な政治的動きを見据えてから行動をおこすべきであろう。それまでに骨太の政策を構築することが望まれる。
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