空しい選挙と深まる政治劣化
谷藤 悦史
早稲田大学政治経済学部教授、政策研究フォーラム理事長
暮れのあわただしい時期に、選挙が行われた。
結果は、民主党の惨敗となった。
選挙前の世論調査が示す結果に終わった。
しかし、国民の関心は低く、投票率も伸びず、選挙区の無効投票率も過去最高になった混乱の選挙であった。
はたして、何のための選挙であったのか。
国民に国の将来を示して、選択を国民に委ねる。民主的選挙の基本である。
そうであるなら、国民が冷静に意味のある選択を可能にする選挙環境が整えられるべきであっただろう。
とてもそうとは言えない。
選挙制度は、違憲状態にある。
千葉四区と高知三区の格差は、二倍以上におよぶ。
それを是正する「〇増五減」案を伴う選挙区割りもしないままに、つまり政治的不作為を前提に解散の決断がなされた。
「政治を進めない」決断がなされたのである。
制度的に瑕疵のある状態で選挙を行うのであるから、選挙の正当性を巡っての違憲訴訟は必至となる。
事実、選挙後に二七件の訴訟が提起された。
制度の混乱はこれに留まらない。
ネット選挙のあり方も未解決であった。
ある新党は利用し、他の政党は控える。
これも正当性に疑問を投げかける。
制度の瑕疵に加えて、民主政治を実践する要件も整えられていなかった。
第三極を中心に、離合集散が激しく選ぶべき政党すらじっくりと整えられなかった。
公示日直前の駆け込み合同や政党づくり。
選挙協力か政党合同なのか分からない候補者調整。
混乱の中で選挙に突入した。
公示日直前に候補者が決定したところもある。
それは政策にまで転移する。
党内の合意があったかどうかも分からず、あわただしくマニフェストーが作られて提示された。
政策がどう系統化され実行に移されるか、今も不分明である。
選挙後には、政策への関与すら曖昧にされる。
選択すべき政党、候補者、政策など政治対象の不確定が世論調査におよび、調査の度に数字が変化し混乱に拍車をかけた。
党利党略の結果であるという。
世論調査は民主党の敗北を予想していた。
負けを少しでも改善して選挙に臨むのが、政治判断であろう。
そこにも失敗がある。
その結果が、得票数を低下させての自民党の勝利である。
この選択にどのような意味があるのか。
明示的な選択のない選挙でもあった。
無駄な費用と時間を費やした思いだけが残る。
日本政治の劣化は、さらに進んだようだ。
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