国会後半の焦点は集団的自衛権
加藤 秀治郎
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政策研究フォーラム副理事長
予算が成立し、通常国会は後半戦だ。
焦点は労働者派遣法改正案とともに、安全保障関連法案で、
そこでは集団的自衛権の行使の是非が問われる。
新聞は「与野党の攻防」というが、国家の存立をめぐる問題だから、党派的利害を超えた論戦を期待する。
特に責任野党・民主党には政権復帰の後にそのまま実行しうることを主張するよう望む。
自民・公明の与党協議を経た法案だから、衆参とも議席では問題がないが、世論は相変わらず伯仲している。
共産党などはそこをついて攪乱に出よう。
新聞・テレビも二分されるだろうが、フェアな論戦を期待する。
気になるのは、集団安全保障と集団的自衛権を混同した報道・論評が今なお見られることである。
小川和久氏が文春新書で言及しているが、朝日新聞などでも誤報に近い不正確な報道がなされている。
問題は、それを指摘されても訂正を出さないことだ。
確かに混同しやすいが、だからこそ訂正での正確な理解が重要なのだ。
慰安婦問題でも挺身隊との混同で混乱を招いたのだから、誤りは正すべきだろう。
その集団的自衛権と集団安全保障だが、正確さだけを心掛けた説明では、分からない人には、いつまでも分からない。
単純化した説明も必要だろう。
要するに集団安全保障は国連のことで、湾岸戦争で問われたのはこちらだ。
今回の主眼はそれとは別で、日米同盟であり、同盟強化のため集団的自衛権を行使できるようにすることだ。
国連は、国内でいうならば警察のようなもので、平和(治安)を乱す勢力をどう抑え込むかという話である。
集団的自衛権は、国連が動かない時(警察が駆け付けるまでの間)、どうするかである。自分で守るしかなく、仲間の手を借りて良い。
現に米国が日本を防衛する姿勢を示してきたから、これまで日本は侵略されなかった。米国から見て、これが集団的自衛権だ。
日本は何もしなくていいのか。
妻や娘が襲われて、夫や父が「警察を呼んでくるから、待っていろ」というのでは、家庭は崩壊するだろう。
問題の本質は何も難しくないのである。これでは、単純すぎるという人には、佐瀬昌盛『いちばんよくわかる! 集団的自衛権』(海竜社)を薦める。
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