統一地方選挙を振り返って
谷藤 悦史
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早稲田大学政治経済学部教授、政策研究フォーラム理事長
二〇一五年四月に行われた第一八回の統一地方選挙が終わった。
選挙が終わってほどなく、そのような選挙があったことを示すニュースがメディアからほとんど消えてしまった。
今は、何もなかったかのように日々が続いている。
この平穏な日々は続くのであろうか。
地方や地域社会がかかえる課題は山積みである。
確実に近づく超高齢化社会、それがもたらす人口減と集落の衰退・消滅。
こうして地域は、確実に自らの手で問題を解決する能力を失う。自助、共助、公助の再編が言われるゆえんである。
田舎とか都会を問わず、すべての地域がその入り口にある。
それを解決する手立てはなかなか見えない。一気に解決するとも思えない。
だからこそ、今から真摯に議論を重ね、小さな試みを積み重ねなければならない。
統一地方選挙は、それを考える絶好の機会であった。しかし、ほとんど何もなされることなく終わった。
地方の疲弊とともに、地方の政治が衰退していることを明らかにしただけの統一地方選挙であった。
一〇の道県の知事選の平均投票率は四七・一%と過去最低である。
福岡県は四〇%を割ってしまった。四一道府県の議会選挙も悲惨である。
岐阜、大阪、奈良を除いて、いずれも過去最低の投票率で、平均投票率は四五・〇六%に過ぎない。
二二八四人の議席に対して候補者は三二七三人と過去最少、無投票で五六四議席(全議席の二一・九%)も決まれば、人々の関心も失せ、盛り上がらないのも当然である。
事態は基礎自治体の選挙にもおよぶ。市長選の平均投票率は五〇・五三%と過去最低、八九の市長選挙で二七(約三割)が無投票当選である。
町村選挙でも低迷は鮮明で、町村長選挙では初めて七割を割り、町村議選は六四・三四%に終わった。
地方政治は、どの政党が勢力を伸ばしたか否か以前の問題になりつつある。地方政治そのものが崩壊しつつある。
それは、「地方分権改革」、「平成の大合併」などの地方制度改革が、何の成果も導き出さなかったことでもある。
地方政治の担い手の継続的な育成、多くの人々が政治に関与し、政治を自らの手で変えられるような権限や財源の保障、
首長制や議会制度の根本的な見直しなどが問われている。
それらの問題に先行的に取り組まなければ、首相の言う「力強い地方創生」など絵に描いた餅である。政策の優先順位を大きく組み替える時であろう。
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