「京都議定書」の轍を踏むことなかれ
大岩 雄次郎
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東京国際大学教授、政研フォーラム常務理事
二〇一五年十一月三十日から十二月十一日まで、フランス・パリで、気候変動枠組条約第二一回締約国会議(COP21)、
京都議定書第一一回締約国会議(CMP11)が開催される。
今回の会議は、京都議定書に続く、二〇二〇年以降の新しい温暖化対策の枠組みが、
すべての国の合意のもとにどのように作られていくかがポイントとなる。
昨年ペルー・リマで開かれたCOP20では、二〇二〇年以降の枠組みについては、
二〇一五年のCOP21に十分先立って提出を招請されている約束草案を提出する際に示す情報の内容等を定めるCOP決定が採択された。
COP21での合意に向けて、各国が提出した新たな枠組みに対する約束草案が合意のカギを握っていることになるが、既に国益を巡る駆け引きと前哨戦は始まっている。
国連気候変動枠組条約(UNFCC)のボン気候変動会議が、二〇一五年十月十九日〜二十三日までドイツ・ボンにおいて開催された。
ここで日本の姿勢に対して大きな批判が集まった。
理由は「温室効果ガスを大量に排出する石炭火力を国内に新設・稼働し、さらに新興国に輸出しようとしている」というものである。
石炭火力発電はより多くのCO2を排出するとしてG7各国では廃止の方針が打ち出されている。
だが、日本は国内外で新たな石炭火力発電所建設を予定しており、これに対して国際NGOを中心に批判が集まった。
国内でも、環境省が、各地で進む石炭火力発電所の計画に対し、温暖化防止の観点から相次いで異議を唱えている。
しかし、CO2の排出を抑制するのなら、化石燃料全体を規制すべきである。世界は天然ガスという化石燃料への依存を高めている。
アメリカはシェールガス革命による石炭の価格競争力が低下したことから石炭離れが可能となったわけで、むしろその余剰石炭は、
主に安全保障上の理由から再生エネに大きく舵を切ったドイツをはじめ、バックアップ電源の燃料として安価な石炭を必要とする国へ輸出される構造が作られている。
各国は、環境のみならず、経済や安全保障における国益の観点から現実的な戦略を追求している中で、
またもやわが国だけが京都議定書のときのように過大な負担を背負わされる愚行を繰り返してはならない。
今、わが国の置かれた環境問題と経済・安全保障問題という複雑なパズルを解く鍵は、原発の早期の再稼働に始まる、
持続的な原発の開発にあるという現実に目を向けるべきである。
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