安倍政権「終わりの始まり」の年へ!!
谷藤 悦史
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早稲田大学政治経済学術院教授、政策研究フォーラム理事長
二〇一六年安倍政権が開始して四年を迎える。もうそろそろ終わりにしなければならない。政策の展開が整合的でなく、論理的に破たんしているからである。
政策が何らかの成果をもたらすためには、少なくとも達成すべき目標と、目標を実現するための手段と工程、さらに人的資金的配置などが明示されなければならない。
政治のシナリオと言ってもよいであろう。それがほとんど示されないのである。
私たちは、何に直面し、何に挑戦し、どこに向かうのか。ますます混迷し、将来への漠然とした不安を掻き立てる。
その不安が、私たちを取り巻くさまざまな事柄に対する挑戦を萎えさせて、社会そのものを停滞させる。
明日への展望がなければ、将来の生活設計すらままならない。どう生きてゆけば良いのか。
何に投資し、何を消費したらよいのか。未来は分からない。分からないからこそ、整合的で明確な政治シナリオが必要なのだ。
政治の責務である。そのことが、安倍政権ではほとんどなされないのである。
現実追随と空虚な言葉遊びの政治が続けられている。
その頂点が、昨年の十一月末に提示された「一億総活躍社会」を実現する緊急対策にほかならない。
非正規労働者の正社員への転換を掲げる。
どのような手段でなすのかが示されない。
保育所の整備、特別養護老人ホームの整備で、それぞれ五〇万人分を掲げる。
そのための財源手当は明らかにされない。低年金者に月額三万円を支給するという。
それによって、低年金者の生活苦が根本的に解消されるわけではない。
GDPを六〇〇兆円にすると言うが、そのための工程も示めされない。
「三本の矢」の成果の検証もなしに「新三本の矢」を立ち上げ、言葉だけが踊っている。
二〇一六年の参議院選挙を前にした「ばらまき」と称されても仕方がないであろう。
虚しさだけが募ってしまう。
こんな政治は終わりにしなければならない。
日本の社会と国家を、そしてそれを構成する私たちを、疲弊させ劣化させるだけだ。
二〇一六年を少しでも明るい年にしなければならない。政治の流れを変えよう。
「政治の流れは変えられない」という思いを変えよう。
その出発は、安倍政権に代わる政権の受け皿を創り、新たな政治のシナリオ、未来への政治物語を提示する試みである。
民主党の政治責任は大きいと言わなければならない。その自覚を促して行きたい。
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