停滞する日本政治を象徴する参議院選挙―新たな脱皮へ
谷藤 悦史
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早稲田大学政治経済学術院教授、政策研究フォーラム理事長
戦後二四回目の参議院選挙が実施された。自民党は改選議席の五〇議席を六上回り、公明は九の改選議席を五上回って、合計七〇議席となった。
自公は、非改選と合わせて一四六議席となり、参議院の過半数を確保した。
政権は安定し、選挙期間中に訴えた「アベノミクス」の政策は継続することになり、安倍首相は高揚のなかにある。
本当に安倍政治は信任されたのか。選挙に現れたさまざまな兆候を見ると決してそうではないことが理解されよう。
選挙区選挙が示しているように、一人区では一一選挙区で自民党は議席を失った。前回の選挙では二選挙区でしか議席を失っていないのである。
選挙区における議席の占有率も、前回の六〇%台から五〇%台へ落ち込んでいる。自民党は圧倒的に勝利していない。
その結果をもたらした野党共闘の成果をある程度評価をしなければならない。その効果だけではないであろう。
大切なことは、野党共闘などの政治戦略の効果の良し悪しを議論で指摘することではなく、本質的で実質的な内容を明らかにすることだ。
東日本の選挙区で、自民党は議席を確保できなかった。何を意味するのか。共通することがある。
安倍政権が進める「アベノミクス」が、これらの地域でほとんど成果をもたらさないことである。
東日本大震災後の復興と再生の事業は、進みが遅い。TPPは推進を認めるにしても、それに伴う新たな農業のあり方は示されない。
首相が言う「有効求人倍率」の改善は地域的格差が明白ばかりでなく、たとえ職につけても生活は豊かにならない。
このようなことが続いている。
これらの地域で、安倍政治へ支持が向かないことは当然であろう。
北海道や東北を除いて、関西、中国、四国、九州は万全なのか。
そうとは言えない。自民党が確保した総得票数は二〇〇〇万票である。
有権者の二割に過ぎない。少数政権である。日本政治の実体である。選挙結果を得ても、深い満足を得られないも当然であろう。
日本政治はこのような状況にある。人々が抱える問題に真摯に応え、多くの人々からの支持を確保できる政治はいつ実現できるのか。
それを問いかける参議院選挙であった。
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