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月刊誌「改革者」2017年1月号
「改革者」2017年1月号 目次
 

羅 針 盤1月号

             ポピュリズム政治を克服しよう:反知性主義からの脱皮へ

               谷藤悦史 ● 政策研究フォーラム理事長・早稲田大学政治経済学術院教授


 昨年は、ポピュリズムの政治が世界を支配した。 英国のEUからの離脱を決定した国民投票、イタリアの国民投票、アメリカ大統領選挙のD・トランプの勝利などが典型である。 それらが、欧州政治のみならず、アメリカに対する各国の外交戦略に混乱をもたらした。明示的な見通しもなく新たな年を迎えてしまった。   日本の政治は、それら混乱とは無縁に推移しているように見える。そうだろうか。 安倍政権は、混乱を前になす術を失って慌てふためき傍観しただけではないか。 トランプの登場で、日本のアメリカ外交は転機を迎え、転換が余儀なくされるのは必至である。 それにも関わらず、アジアにどのような安全保障や経済秩序を形成するのかについて何の政策も提示せずに、日米同盟を基軸にした外交の継続を叫び続けている。 政権の陣容や政策が定まらない段階で、世界に先駆けて次期大統領に接見して「信頼を構築した」と外交成果を誇って何の意味があろう。 世界の外交は、「個人的つながり」で進むほど容易ではない。プーチンとの「個人的つながり」を基にした外交の失敗は、明らかになっている。 冷徹な政治状況の分析によって、政策と戦略を構築し、相互利益を明確にして交渉を進めなければ、外交の成果はもたらされないのである。   今こそ、政治や外交に豊かな「知」の動員が求められる。政治や外交を、「信頼関係」を築くという「私」の試みに委ねてはいけないのである。 新しい年は、不確かな「私」の政治や外交を改めるときにしよう。 「知」を総動員して、さまざまな情報を収集して冷静に分析し、多くの能力を集めて政策を実行する政治を構築して実践しよう。 「反知性主義」を改め、「知」に基づく政治を進めるのである。 「知」を盲目的に信頼することではなく、敬意をもって評価し、動員し、活用する政治である。 それがポピュリズム政治やそれから派生する政治的混乱を脱皮することにつながる。 「冷静で知的な政治」を取り戻そう。そうした政治を世界に先駆けて日本から進めよう。 そのための最初の試みは、政治的失敗を積み重ねる安倍政権に「ノー」の意思を突きつけることかもしれない。
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