日本の活路をどう切り拓くか
2017年全国会議を終えて
日本大学法学部教授
岩渕 美克
本年の全国会議も無事に幕を閉じました。ここ数年は三〇〇名を超える方にお集まりいただき、熱心に聞いていただいています。
ご参加の皆様に御礼申し上げます。
今年のテーマは、「日本の活路をどう切り拓くか」でした。
国政では、相変わらず安倍内閣が、消極的な支持が多いものの、高い支持率を維持しており、その体制は磐石にも見える状況です。
政党支持率も与党の一人勝ち状況が続いています。いわゆる「一強多弱」の政党体制が、ここ数年続き、異常とも思える事態になっています。
このような情勢の下、日本のあり方をいかに国民の真の意向に沿った方向に転換させるかという観点から、このテーマにした次第です。
ここに来て、防衛省の日報問題、森友学園をめぐる口利き疑惑、いわゆる共謀罪法案など、与党のおごりとも見られる問題が出ているように感じます。
東京都政も、小池劇場とも言われる劇場型政治が展開され、物事の本質を見失っている印象が強くなっています。
谷藤理事長の基調講演では、安倍政権がもたらしてきたものを分析し、不寛容の政治が蔓延していることが提起されました。
そこで、こうした状況を打破するためには、ポピュリズムを超えた「賢明(クール)な政治」を日本から創造する、寛容の政治を再び取り戻すことなどが話されました。
これを受けた第1部会では、「新たな日米関係をどう切り拓くか」をテーマに、論客の方々にご討論いただきました。
トランプ大統領の就任によって、国際情勢は大きく変換するのではないかとの推測も呼びましたが、根本的には日米関係は当面維持されることになると予想されています。
しかし、将来的にはロシア、中国などとの関係から日米関係も考えていかなくてはならず、その際日本がどのように自立していくかが熱心に討論されました。
第2部会では、「『一強多弱』の閉塞感をどう克服するか」をテーマに、日本に近い状況にあるドイツの政党状況などを参考にしながら活発に議論されました。
昨年の参院選での野党共闘は短期的な成果こそあげたものの、長期的に見れば共闘することは難しく、目先の利益にこだわるような方策を採るのではなく、
地味であっても、地に足をつけた政策を愚直に推し進めていくことが、こうしたポピュリズムの時代には重要であることが語られました。
第3部会は、「日本経済の閉塞感をどう切り拓くか」でした。安倍内閣の主要政策であるアベノミクスの失敗は明らかであり、
日本経済は閉塞感に包まれているにもかかわらず、道半ばとの抗弁でそのまま進められています。
短期的には日本経済は大丈夫だろうが、世界的な政治リスクなどへの対応が必要であることが述べられました。
閉塞感を打破する具体的な戦略として、インフレ有りきではなく、成長戦略を進めること、経済規模の拡大を海外のマーケットに求めることが提案され、
それに基づいて議論が展開されました。
どの部会も、フロアの方々の真剣なご清聴のおかげで、有意義な全国会議になったと思います。
今回は各部会に政治の現場の諸先生をお招きし、より具体的な討論ができたと思います。
今後とも、お役に立てるような情報を提供するようにしなくてはと思った次第です。 |