将来不安を払拭する経済対策を
大岩 雄次郎
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東京国際大学教授・政策研究フォーラム常務理事
「アベノミクス景気」は、第二次安倍政権発足の二〇一二年十二月以降から二〇一七年三月まで景気回復局面が続いたとの判断になれば、
バブル経済期を抜き戦後三番目の長さの五二か月となる見通しだ。ただ、世界経済の金融危機からの回復に歩調を合わせ、
円安による企業の収益増や公共事業が景気を支えているのが実態である。
つまり、過去の回復局面と比べると内外需の伸びは依然弱く、雇用環境の改善に比して、賃金の伸びは限定的で、極めて「実感」の乏しい回復である。
戦後最長の回復期は、二〇〇二年二月から二〇〇八年二月までの七三か月に及んだ。
このときの景気回復過程では、従来と比較して純輸出や交易所得等、外国との取引がわが国の成長率に大きな影響を及ぼしたとされる。
特に、二〇〇四年や二〇〇五年第4四半期以降、純輸出の寄与度が拡大した。
一方、二〇〇四年以降は交易条件の悪化による交易所得の流出がGNI(国民総所得)の成長率を引き下げる方向で寄与した。
もう一つ特徴的なのが消費の停滞である。内需のうち、設備投資は景気回復に比較的大きく貢献してきたが、国民総所得の六割近くを占める消費は、
一九八〇年代後半、一九九〇年代半ばと比較しても伸び悩んだ。
その結果、景気回復期における実質GDP(国内総生産)成長率は二・四%と、一九八〇年代後半と比較してそれほど上昇しないまま終了した。
「アベノミクス景気」も個人消費は低迷し、成長をリードしたのは外需の輸出である。
前回の景気回復期間の輸出の伸びは八割に達したが、今回は約二割増程度で、設備投資も約一割増で、二〇〇〇年代の伸びの半分ほどであり、
賃金の伸びは乏しく、個人消費は横ばい圏を脱しきれていない。
需要の不足分を公共支出が埋めている構造は、前回より深まっており、財政健全化という長期的課題はより深刻となるのは避けられない。
これが個人消費を抑制する悪循環を生んでいる。
第一生命経済研究所によると、タンス預金の増加が止まらない。
直近の二月末時点で四三兆円と前年同月比八%増えた。
増加額は三兆円でGDP(国内総生産)の〇・六%に達する。
これは、日本の財政悪化に起因するもので、将来不安が払拭されない限り、個人消費の回復は難しく、経済の好循環による自律的拡大には程遠い。
消費増に向けた対策が肝要である。
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