政治の基盤が崩壊しつつあることに危機感を!
谷藤 悦史
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早稲田大学政治経済学術院教授、政策研究フォーラム理事長
民主主義の政治はもちろんのこと、政治の営みそのものを揺るがす事態が次々と生じている。政治そのものが危機に陥っているのである。
その危機が重大であることを広く認識しない世論やメディアにも不安を抱いてしまう。
多くの方はお分かりであろう。
財務省、文部科学省、厚生労働省、防衛省と続く、政治・行政に関わるさまざまな事象についての公的文書が隠蔽・改竄されていたことである。
データや資料の取り方そのものも、科学的手続きを取らず恣意的に操作されていたことも明らかになった。
将来的な生活を構築する政治を真摯に考え、指針を作り上げ、政策内容を詳細に決める前提となる基本的なデータや事実が毀損されていたのである。
またそうした資料に基づいて、延々と意味のない政治議論がなされてもいた。
完璧に整えられたデータ、資料、情報、事実の収集はあり得ない。
政治的営みの多くも、完全な事実や情報によってなされない。
それを前提にしても、可能な限りそれらを収集して事実が何であるかを明らかにして考察しないと、政治判断は難しくなり、
時には大きな間違いを犯すことになってしまう。
日本のみならず世界の政治で、間違った事実や情報で誤った政治が遂行された事例は枚挙にいとまがないであろう。
多くの人的、物的損失のみならず、無用な悲劇がもたらされたことも事実である。歴史から学ばなければならない教訓である。
さまざまな事実や情報を前提にした政治的判断が必要であり、権力の地位にある人間の政治的判断を前提にした事実や情報の収集は無用なのである。
権力への忖度が優先されたなら、民主主義のみならず政治そのものが腐敗して崩壊する。
ましてや権力の地位にある指導者(大統領や首相)の夫人や近親者への忖度などは、論外のことであろう。
そうした政治的配慮が行政組織に浸透しているなら、行政のみならず民主主義が壊れてしまう。
こうした行政や政治を生み出した原因の一つは、政権交代無き政治状況の継続にある。政権が持続するから、政権の驕りと、
政権への追随が始まり腐敗するのである。安倍政治の継続を許してはならない。
危機の認識を呼び起こして、安倍以後の政治を模索するときであろう。
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