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月刊誌「改革者」2019年1月号
「改革者」2019年1月号 目次
 

新しい年に、新しい政治潮流を作ろう

谷藤 悦史●早稲田大学政治経済学術院教授、政策研究フォーラム理事長

 二〇一八年は、ポピュリズム政治の波が収束するどころか深まりを見せた。ポピュリズム政治は多様で、主義・主張や政策を一義的に明確にすることは難しい。 @反知性主義や反エリートの政治、A政治を「正」と「悪」に二元化し自らの主張だけを「正」とする権威主義の政治、その政治を進めるために、 B議会で多数を確保することを目的とする迎合主義のバラマキ政治、C協調主義を排して「自国第一」を標榜する自民族中心主義の政治など、多様な様相を持って出現する。 その中で、昨年は自民族中心主義の排他的な愛国主義の傾向を色濃くした一年であった。トランプのアメリカ、プーチンのロシア、習近平の中国が代表である。 それらに呼応して、ブラジル、ハンガリー、韓国でも同じ傾向を深めた。  国内のポピュリズム政治が、国際政治に反映され、さまざまな対立が出現することになる。グローバリゼーションや自由貿易体制の負の局面だけが強調され、 「自国第一主義」と保護貿易主義の政策が展開され、制裁関税の発動など貿易戦争が頻発した。 国連を中心とする国際協調体制にひびが入り、EUなどの地域協調体制の揺らぎにもつながることになった。アメリカの国連批判、イギリスのEU離脱などが典型である。 第二次大戦後、人類と国々が懸命に創造してきた協調体制が、崩壊の危機に直面しているとも言えよう。  ナショナリズムの再興と言われるが、本当なのだろうか。ナショナリズムは、特定の地域や国で生を営む人々が、 他の地域や国と異なる伝統や文化を有した独立した存在であることを自覚し、同時に他の地域や国の人々と等しい地位や権利を要求する政治信条に他ならない。 自分が生まれ育った地域、文化などに共感を持つ自然的感情である。そこに、良し悪しはない。  ポピュリズム政治で広がっているのは、郷土や国を愛する自然的感情のナショナリズムでなくジンゴイズム(排外主義的で好戦的な愛国主義)である。 ジンゴイズムが悲惨な歴史を生んだことは、二十世紀前半の世界が教えている。新たな年は、「ジンゴイズムを内包するポピュリズム」から脱皮する政治潮流を作り出そう。
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