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月刊誌「改革者」2019年11月号
「改革者」2019年11月号 目次
 

北のミサイル発射に改めて注意せよ

加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長

 北朝鮮が十月二日、再びミサイルを発射した。潜水艦からの短距離ミサイルだが、何度も繰り返されているうちに慣れてしまい、 何も感じないようになってはいないか? 金正恩はなかなかの交渉上手のようであり、改めて注意を促したい。  その点を確認する上でタイムリーな記事がある。共同通信の配信で、十月十三日の地方紙に載った。河野克俊・前統幕長が、 二〇一七年後半に米朝危機は深刻で、軍事衝突が「あり得た」と証言しているのだ(『神奈川新聞』)。  北朝鮮のミサイル発射が続き、米朝の軍事衝突にエスカレートする危険性が十分あった、というのだ。 河野氏は「軍事オプションが現実味を帯び、『もしかしたら……』との思いがあった」と語っている。  その後、米朝協議はあったが、北は基本線を何も変えていない。着々と核とミサイルの開発を続けており、隣国・日本への脅威は増大している。 だが、小出しに続けてきているので、感覚がマヒしてきている。  問題は、トランプ米大統領が「短距離ミサイルなら問題視しない」と繰り返し語ってきたことだ。 「米国ファースト」で、ハワイや米本土に届かないならOK、と受け取られかねない問題発言である。  今回も短距離で、日本には深刻な脅威だが、トランプ発言に照らすと米国は別だ。「知らんふり」なら、日米同盟が揺らぎかねないのだから、 安倍首相は遠慮せず、はっきりクギを刺しておくべきだ。  米国内でも、トランプ大統領と、他の高官では発言が大きく異なる。例えば、九月にトランプに解任されたボルトン補佐官だが、 「完全な非核化」を譲ってはならないと、主張してきた。米政府がこの線で一丸となってもらわないと、大変なことになるのだ。  今回のミサイルが潜水艦発射のものだということは、その意味で重大である。今度が二度目だがSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)だと、 短距離でも、米国の近くで発射すれば届くからだ。  トランプ大統領も認識を改め、「完全な非核化」に立場を戻してもらいたい。そうでないなら、日本国内で「独自の核」の議論がおきてこよう。
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