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月刊誌「改革者」2020年2月号
「改革者」2020年2月号 目次
 

北朝鮮の核に馴らされるな

加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長

 慣れというのは恐ろしい。北朝鮮の核開発のことである。金正恩政権が次々に核やミサイルの実験をしてきたので、こちらも「馴らされ」、「またか」という程度の感覚になっている。だが、今や北の核の脅威は大変なレベルに達しているのである。  米朝協議が始まり、そちらへの期待もあって、わが国では危機感を感じないでいる人が多いが、問題である。  二〇一八年六月のシンガポールでの、最初の米朝首脳会談こそ、期待を抱かせたものの、翌年二月のハノイ会談は決裂に終わった。同年六月の板門店会談でも、「協議再開」を決めただけで、何も進んでおらず、その間、北は着実に核の能力を高めてきた。  困るのは、わが国の内部で、北朝鮮の技術をバカにするような論評が絶えず、「実戦配備はまだまだ先のこと」との観測を強調している新聞もある。呑気な話と言うしかないが、一般国民もそんなムードに流されている。  真相はどうなのか。─本誌一月号で「専門家中の専門家」というべき西村金一氏(軍事・情報戦略研究所長)が、警告を発している。自衛隊、防衛省で核の問題を長年、扱ってきた西村氏は、既に北主導での統一を迫る手段として十分なものになりつつあるというのである。  以前から北は、ソウルを攻撃する能力は有していたものの、それより南に配置されている米軍・韓国軍の反撃を、どうかわすかがネックとなっていた。ところが、金正恩体制の下で、核とミサイルの実験を繰り返し、格段に能力を高めた、というのだ。  「北にとって、やり残していることは、〔半島から〕米軍を撤退させることだけだ」というのが、西村氏の結論である。  そうなると、米韓関係に眼がゆくが、文在寅・韓国大統領は、今年の年頭会見でも相変らず、北への融和的発言を繰り返しており、心もとないこと夥しい。  アメリカ政府もイライラしていることと思うが、朝鮮半島はわが国のより直接的な関心事である。中東情勢もにわかに緊迫しており、注意を払わなければならないが、朝鮮半島からも目を離せない。
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