「地方創生戦略」の破綻を真摯にとらえよ
谷藤悦史●早稲田大学政治経済学術院教授、政策研究フォーラム理事長
首都圏における人口の一極集中がとまらない。転入超過の都道府県は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)以外では、大阪府、愛知県、福岡県、滋賀県だけで、残りの三九道府県は転出超過である。
リーマンショック後に、東京圏の流入は減少していたが、近年は転入が加速している。大阪圏や名古屋圏でも、外国人の流入を除くと転出超過で、地方の停滞が著しい。
安倍政権は、二〇一四年から「地方創生」を掲げ、二〇二〇年までに東京圏の転出入を均衡化させるとしたが、現状をみると実質的に破綻している。
安倍政権は、一九年六月に「地方創生基本方針」を決定、第二期五か年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を提出した。
美辞麗句がならび、さまざまな目標が掲げられているが、大きな話題にもならなかった。参議院選挙の時にも一向に話題にならない。
その後、国会論戦は、「桜を見る会」、「IR汚職」、「公選法違反問題」、「中国の新型肺炎」問題に終始している。
結果的に、地方の疲弊が著しい現在にあって、集中的な議論がなされることもなく、「地方創生」の問題は脇に押しやられ、政策の結果を検証されることなく、
ましてやその政治的責任も問われることなく、成果をもたらさない意味のない政策がだらだらと続けられている。
第二期五か年計画の中心が、「関係人口」の創出と拡大という。「定住に至らないものの、特定の地域に継続的に関わる人口」の創出と拡大を目指して、
個人と組織の取り組みを加速するという。地方創生推進交付金を付与したり、サテライトオフィスと二地域居住、サテライトキャンパス、地方創生インターンシップ、
農山漁村体験などの事業が並ぶ。地方創生プロジェクトに対する企業の寄附の税額控除、企業の本社機能移転なども推奨される。地方大学つくりと高校改革、少子化対策なども加えられている。
述べられていることは、当たり前すぎて政策内容が具体的でなく、実効性にも乏しい。全てが絵に描いた餅である。このような「地方創生」戦略は、根本的に改めるべきであろう。
安倍政権に、「地方創生」を委ねても無駄である。何の展望も描けない。オリンピック後、この問題は深刻化するであろう。新しい地方を創出するためにも、政権交代は不可欠であろう。
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