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月刊誌「改革者」2020年6月号
「改革者」2020年6月号 目次
 

中国の「挑発」から眼を離すな

加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長

 中国の武漢に発するコロナ・ウイルスにより、「巣ごもり生活」を強いられ、ウンザリしている方が多いようだ。こんな時に「なんだ」というニュースがあるのだが、あまり大きく報じられてはいない。  こうなると、限られた数社の新聞を注意深く読まないといけないのがやっかいだが、中国の軍事的挑発が続いているのである。  四月下旬に統計が出たが、尖閣列島沖に進入してきた中国船が今年は五七%も増えているのだ(一?三月、前年比)。神経を逆なでするもので、大々的に報じられていたなら、怒り出す国民が多かったのではないか。  日米同盟の重要性が高まるのはいうまでもないが、南シナ海でも同様の動きに出ているから、周辺諸国との連携も大事になる。感染症封じ込めで世界が協調しているこの時期に、 こんな動きとは「いつにも増して許されない」と河野防衛相が言っているのは、評価してよい。  尖閣の領有権の主張に変わりはないという、いかにも中国らしい意思表示だとしても、増えているのはどういう訳か?─おりしも米海軍の空母などにも感染者が出ているから、「挑発」という以外に言葉がない。困った国だ。  日本の新聞のなかには、今なお中国に配慮し、この種の報道にはスペースを割かない新聞があることに、もっと注意を向けてもいいのではないか。  さすがにテレビは国民感情を無視できないから、対中国では厳しい論調になっているように思う。だが、新聞は相違が大きい。こういう時だからこそ、ぜひ読み比べてみていただきたい。  日本の対応としては、改めて中国という国はそういう国だという認識を新たにすることから始めなければならない。  ウイルス対策が手ぬるいということで、憲法を改正し、緊急事態条項を入れようという「空気」が出ているが、中国のこの軍事的な動きを意識するなら、九条改正の方も議論が必要なはずだ。  五月一日付の「産経抄」は、こういう中国の動きにつき、「各国がウイルスの感染対策に追われる隙をつき……」との表現を用いている。大変な時だが、中国の動きから眼を離してはならないのだ。  今回の「禍」を福に転じさせるには、いろいろ考えないといけないことが多いのである。
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