出 版 物
月刊誌「改革者」2021年9月号
「改革者」2021年9月号 目次

羅 針 盤(9月号)

国会の怠慢の責任を問いたい

加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム常務理事

 画にかいたような国会の怠慢なので、紹介して議員に猛省を促しておきたい。  八月二十二日に横浜市長選が行われたが、当初、一〇人が名乗りをあげ、最多得票の候補者も四分の一の法定得票数に達しない事態が懸念された。その場合、やり直しとなるが、現行の規定は、常識的な上位者の決選投票ではなく、立候補の受付からやり直される「再選挙」方式なので、何度でも繰り返されかねないのだ。  以前から問題が指摘されているが、国会の不作為で公職選挙法の不備が放置されたままとなっているのだ。最近でも二〇一八年に千葉県市川市で再選挙となったし、大都市では〇三年の札幌市の例がある。札幌では二度目に新規の立候補者も出て、混乱が深まるおそれがあったが、なんとか二度目で決まった。関係者は、こんなことは最後にしてほしいと思ったはずだが、結局は放置されてきた。  人口が三八〇万人近い最大の基礎自治体・横浜市で、三度、四度と選挙が繰り返されるとしたら、「悪夢」でしかない。新しい立候補者も出てくのだから、キリがなくなり、市長不在が長期化しかねないのだ。世間離れした大学の学長選挙に類似の規程が残っており、半年、不在が続いたなどという例があるが、身近なら勘弁してもらいたい事態だ。  横浜では結局、立候補者は八人となり、何とかトップが四分の一をクリアし、再選挙は免れた。だが、「結果オーライ」で済ませてはならない。今度こそ、絶対に法改正してもらいたい。市長不在の長期化も困るが、無駄な選挙関連費用も見逃せない。党派の利害が絡む問題ではないのだから、速やかな法改正を注文したい。  札幌のケースでは、政治家への働きかけもしてみた。どれくらいの期間でできるかと、米沢隆衆院議員(当時)に尋ねると、「一週間」との答えだった。やれば簡単なことなのだ。以前の規程が上位者の決選投票方式だったから、それに戻せばよいだけの話である。党派の利害も絡まないことであり、こんなことすらできないようでは、国会無用論を唱えたくなる。  どなたか、賛同いただける弁護士の方がいらしたら、一緒に損害賠償の訴訟でも起こしませんか─などと言ってみたくなるほど、酷い怠慢・無作為である。
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