世論の流れをとらえて政治を構築しよう
谷藤悦史●早稲田大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長
政権発足時に高い支持率を誇った岸田政権に対する世論の流れが変わり始めた。昨年十二月の「時事世論調査」は、内閣支持が二・二ポイント減の四四・九%、不支持率が二ポイント増の二四%と微妙に変化した。
新年になると、NHKと読売が支持率の上昇を報じたが、その他は現状維持と低下となった。朝日が四九%と横ばい、毎日と共同は二から四ポイント減、日経は六ポイントも減少して六〇%を切った。
支持率の低下が定常化したのである。
古今東西を問わず、どの政権も政権発足時に支持率が高まる。「新しい資本主義」の実態が何であるかも分からず、「新しさ」や変化に期待が高揚するからである。
やがて政権についての情報量と経験値が有権者の間に高まると、高揚は鎮まり冷静な判断が回復する。一月十七日の通常国会の開始で、議会での議論が展開され広がると、有権者の政治についての情報量が増える。
開かれた議会が、有権者の「冷静な判断力」を回復させるのである。議会政治の効用である。「政権ハネムーン」は終わり、岸田政権は、この春に正念場を迎える。
岸田首相は、夏の参議院選挙で安定多数を確保するため、コロナ対策や自民党内の支持固めに専心する。「守りの政治」でもある。衆議院の解散がない限り、二五年の参議院選挙まで選挙が行われず、長期政権が約束されるから当然であろう。
しかし状況は芳しくない。「丁寧に説明する政治」を謳いながら、ワクチンの確保数や接種目標、何を規制し何を緩和するかの基準など一向に明示化されずに二転三転する。
「新しい資本主義」や「デジタル田園都市構想」の具体的政策も提示されないまま言葉が空転している。
野党に何が求められるか。政治に対する「冷静な判断」を回復した今こそ、有権者は耳を傾けてくれる。第一は、岸田政権の本質を解き明かすことだ。
第二は、それを基にした参議院選挙に向けた対抗軸となる政策の形成と、停滞した日本の経済や外交に新たな展望を示す指針の提示である。参議院選挙のための候補者選考より、優先されるべき課題である。 |