出 版 物
月刊誌「改革者」2022年10月号
「改革者」2022年10月号 目次

羅 針 盤(10月号)

反社活動を撲滅する「正義の福祉社会」を

谷口洋志●中央大学教授、政策研究フォーラム副理事長

 夕方の公共放送では当日起きた最新手口の特殊詐欺を紹介し、犯罪に対する注意を喚起する。車を運転すれば毎回あおり運転の恐怖に直面する。近所では夜遅く暴走族や不良生徒がバイクの爆音とともに騒ぎ立てる。
そして多数のフィッシング詐欺メールが毎日届く。SNSでは、匿名を悪用して人を誹謗中傷する連中がやたら多い。
 日本はいつからこのような不安と不信にさいなまれる社会になったのか。これらの反社会的行為に対して、なぜこうも日本社会は寛容なのか。  数十年間働いて苦労して積み上げた個人の資金をだまして奪い取る集団や個人に激しい怒りを感じないのか。あおり運転で善良な運転者を恐怖の世界に陥れる行為者に対して、初犯なら許そうなどと甘い対応で良いのか。 詐欺メールで日常生活を混乱と不安に陥れている状況を放置して良いのか。匿名を利用していじめや誹謗中傷を行う連中(児童・生徒を含む)や、障がい者に対して公然と差別的言動を発する教師を野放しにして良いのか。 反社宗教活動との関連が暴露されても記憶にないと答える無能政治家を許して良いのか。
 これらの反社行為に対する怒りは、行為の当事者だけでなく、有効な対策を一向に講じない政府や政治家たちにも向けられるべきだ。問題なのは、日本では危険な場所や機会を避けようという注意喚起をするばかりで、
反社行為への対策も反社行為者への厳罰も極めて不十分なことだ。責任ある行為・行動をとらない大人の責任も重い。
 これに関連して、ある高校生の言葉が胸に突き刺さる。夢見て進学したはずの高校サッカー部で教育的指導という名の暴行・暴力を受け、入学辞退に追い込まれたにもかかわらず、当初は誰も動かず、大人たちは「問題を見て見ぬふり」をした。 これをみて青年は「サッカーだけでなく日本社会そのものに絶望」し、「日本が嫌になった」という。
 こうした状況を放置しておきながら、若者の投票率が低いと嘆くのは無責任だ。教育者や政治家を中心とする大人たちがこのような青年や被害者の切実な声を取り上げて対策を講じることこそ今必要だ。 今こそ教育現場や国会・地方議会などの場で、責任ある大人が声を上げ、動くべきときだ。
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