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月刊誌「改革者」2023年 11月号
「改革者」2023年11月号 目次

先進国脱落と閉塞感をどうするのか

谷口洋志●中央大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長

 残念なことに、日本の停滞と退廃を示す兆候は枚挙にいとまがない。それは政治、経済、社会・文化など多方面に及ぶ。
 政治面では、安倍政権後の自公政権の傲慢さが際立ち、最近でも旧統一教会との深い関係を追及されながらのらりくらりとかわして生き延び、今でも政府与党の要職にいるという不合理がまかりとおる。政府リーダーは、原稿を間違えずに読み上げることに注力し、国民や聴衆の顔を見ながら自分の言葉で語りかけることをしない。
 経済面では、IMF経済見通し(二三年十月発表)によると、米ドルベースの国内総生産(GDP)が二三年にドイツに抜かれ、二七年にはインドに抜かれて世界第五位となる(二七年にはインドが第三位)。IMD世界競争力ランキングでは、日本の順位が一九年の二五位から二二年の三四位に落ち、韓国や中国の下となった。同デジタル競争力ランキングでも三〇位から三四位に落ち、マレーシアやタイに追い抜かれた。
 社会・文化面では、電話やネットを使った特殊詐欺、凶悪犯罪、誹謗中傷・人権侵害がはびこる。子供社会ではSNSを使った陰湿な集団的いじめが親の知らないところで横行する。日常では、自転車に乗るときも階段を降りるときもスマホを使いながら他者の通行妨害をする人間が減らない。テレビでは、同じタレントが複数の番組に毎日登場し、知性が欠如した単語を使って無意味な会話を繰り返し、自分たちだけで楽しんでいる。
 先行きが一向に見通せない閉塞感を前にして、政権与党は先進国脱落という現実から目を背け、次回総選挙で票を伸ばすことしか眼中にない。政権を支えるブレーンたちは、危機は慢性的に発生しているのだから、継続的な財政拡大が必要なのだと珍説をのたまう。これを受けて政権与党政治家は大盤振る舞いを主張する。彼らには、財政拡大の(事前・事後の)経済効果など眼中にない。
 先進国内での日本の地位大幅下落や政治・経済・社会・文化の退廃がもたらす閉塞感を、いったい誰がどこで話し合い、解決策を探るのだろうか。これらを真剣に議論するためには、過去・現在・未来に通ずる価値観や哲学や知的センス(知恵)をもった責任感ある人たちの参加と結束が欠かせない。
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