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月刊誌「改革者」2008年10月号
「改革者」2008年10月号 目次
 

羅 針 盤(10月号)
            首相の見識が求められる政治主導行政の確立

                          堀江 湛
              尚美学園大学名誉学長・政策研究フォーラム理事長


民意の洗礼を受けない三代目の首相、麻生自民党総裁が誕生した。衆議院議員の残る任期は一年を割っている。 要するに選挙管理内閣だ。同氏は対立候補四人を新内閣で入閣を求めると報道された。 小池候補は直ちにこれを拒否したと伝えられるが、基本政策で相容れない対立候補を抱え込んでどうするつもりだ。   小選挙区比例代表並立制による総選挙も四回行なわれ、総選挙が政権選択の機会だという理解は広く国民に共有されるようになった。 マニュフェスト選挙も定着してきた。 麻生氏は施政方針演説までに持論の財政出動の必要を党首として全党の支持を得た工程表をつけたマニュフェストに仕上げる義務がある。 政治主導行政が叫ばれて久しい。わが国は議院内閣制の国だ。 公選による国民代表から構成される国会が、国権の最高機関として立法権を握り、強大な近代国家の行政権をその監視下に置くために、 国会の中から首相を選び内閣を組織させ、行政権の行使について国会に責任を負わせるという統治システムだ。 しかし現実には行政府の力は強くて一筋縄ではいかない。 政治主導行政を制度的に保障しようとしたのが、森内閣のときに発効した行政改革と官邸権限強化の法改正だ。 但し制度ができてもその運用は政治家自身の識見、リーダーシップと行政の実態についての理解、優れた政治任用のブレーンのプールが不可欠だ。 八月二日福田首相は突然内閣改造を行なった。しかし各省庁は八月末の予算の概算要求提出を控え、省内全体目の色の変わっている時期だ。 しかも内閣には来年度予算、あるいは暫定予算の編成に必要な未処理の重要問題が残っている。その時期に大臣の首の挿げ替えとは何事だ。 大臣が予算の編成や執行に関われなくて何が政治主導行政だ。首相も大臣も四年間任期いっぱい務めて始めて一定の成果が残される。 五五年体制下自民党の首相は二年、大臣は一年のたらい回しが官僚主導行政を跋扈させたといってよい。 さらに一月後今度は首相自身が政権を投げ出した。 就任一ヵ月で首になった大臣たちこそいい面の皮だ。 首相が任期途中で退陣したら、新首相は自身の基本政策を提示し、党の総合政策をまとめ、解散総選挙を行なって民意を問うのが筋だ。 安倍、福田の二代の首相がこれを怠って、三代目の首相登板となった。議院内閣制の自己否定だ。やはり政権交代が必要だ。 民主党も挙党一致、背水の陣で頑張って欲しい。
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