問われる首相の資質
堀江 湛
尚美学園大学名誉学長・政策研究フォーラム理事長
麻生内閣はどうやらダッチロール状態だ。
首相がいろいろ意見に耳を貸すのはよいがそのたびに発言が二転三転するのに業をにやした関係閣僚や党内から歯に衣を着せぬ批判や
首相を軽るんじる声が上がり始めた。
全国紙まで公然首相の資質について疑問を呈し始めた。ただごとではない。
つもり重なった不満が爆発したのは二兆円の定額給付金の配布方法と道路特定財源一兆円の地方移譲の問題でだ。
緊急生活対策のひとつとして第二次補正予算に計上される、選挙目当てのばら撒き、二兆円の定額給付金は、
小渕内閣時代公明党の要求で配られた七千億円の商品券、地域振興券の焼き直しだ。
どうやら首相が発表した段階では細目は詰められていなかったようだ。
配布対象者を定額減税では網からもれる課税最低限以下の低所得者も取り込む問題に始まり、高額所得者の所得制限で法的技術的問題等迷走を重ね、
最終的には首相発言で所得制限、辞退要請の所得額の線引きと実施の有無を含めて配分一切を国費負担で市町村に丸投げすることになった。
これでは市町村がたまらない。緊急対策のはずの給付時期も第二次補正予算先送りで年内が年度内配布にかわった。
道路特定財源の一般財源化は福田内閣時代、首相決断で決まったはずだ。
ところが首相が追加生活対策として地方の疲弊を救うために、第二次補正でこの特定財源一兆円以上を地方に移譲すること発表をした途端、
道路族を中心に党内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
これまで道路特定財源の国の取り分三兆五千億円のうち七千億円を地方道路整備緊急交付金、六千億円を道路関係補助金として地方に配分していた。
党の道路族はこの一兆円の中に七千億円が含まれるとし、地方側はこれまでの取分一兆三千億円に地方交付税一億円の上乗せを求めている。
応援団の所管官庁も加わって党、政府、地方も巻き込んでの大騒動だ。
首相は全国知事会で真水一兆円以上と軍配をあげたが、道路族と国交省がすんなり納得したとは思えない。
首相は橋本・小泉両内閣の閣僚だった。両首相とも閣内ではトップダウンの強力なリーダーシップを発揮した。
ただし何れも党内外のブレーンとの綿密な打ち合わせにたっての指示だった。首相はこの手続き抜きで独走する。
過日の記者会見で首相は選挙になったからといって行政がなくなるわけではない。直ちに政治空白が起こるわけではないと本音を披瀝した。
小沢代表も首相の注文通り党首会談に応じた。首相もここは公約通り、乾坤一擲解散して死中に活を求めてはどうだ
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