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月刊誌「改革者」2009年1月号
「改革者」2009年1月号 目次
 

羅 針 盤(1月号)
           この危機を持続的発展の基礎作りに転じよう

                          堀江 湛
              尚美学園大学名誉学長・政策研究フォーラム理事長


  「100年に1度の金融危機」に直面し、この対応策をめぐる政界の混乱の中で新年を迎えた。 この政治的混乱の根本的原因は官邸主導行政を叫びながら自公与党と官僚を御し得ない麻生首相の力不足と情勢判断の失敗にある。
景気回復には金融政策がもっとも有効とされる。暮れの19日、日銀は金融政策決定会合で米国のゼロ金利政策に対応し、 政策金利の誘導目標を0.1%に引き下げた。また、金融機関への資金供給を潤沢にしても、金融機関自体が株式その他の大暴落で財務体質が悪化し、 不良債権化を恐れて貸し出しを躊躇することに備え、日銀が直接、企業の発行する短期無担保の社債、コマーシャルペーパーを買い入れ、 企業の資金繰りの円滑化を図るなどの措置をとった。
突然の世界的不況は日本の製造業を直撃し、これら企業の派遣労働者の大量解雇をもたらした。 派遣労働者は派遣元の会社から給与を得、派遣先の会社でその指揮命令で働き、派遣先の会社は派遣元の会社に派遣費用を払うという三角関係にある。
派遣労働はまずコンピュータ関連業種など専門性が強く一時的に人材が必要とされる業種で求められるようになり、 1999年規制緩和で特定の禁止業種を除いて雇用一般に解禁された。この結果大手企業が子会社として派遣会社を設立しそこから親会社に派遣させ、 労働組合を抜きにして人件費の節約や繁忙期の従業員増減のクッションに使う例が増えてきた。 今回の解雇も派遣元の会社の責任というのが派遣先会社のトップの当初の意識だった。
暮れの日銀の決定会合と同日、民主党その他野党が参院で可決した雇用対策四法案、これは衆院で廃案になったが、この目玉も解雇、 雇い止めを防ぐ有期契約を以前のように特定業務に限定しようとしたものだ。
同じ19日、遅ればせながら第2次補正予算案と来年度予算案、 両者合わせて93兆円の財務省原案が明らかにされた。 来年度予算のうち3330億円が財務省の振り付けで重点枠として閣議決定までに首相主導で決めることになった。 官邸主導が泣くというものだ。 財政出動という以上それはこれからの日本の持続的成長の糧となるものでなければならない。 子育て、高齢者介護、地域活性化など思い切った発想の転換による「重点配分」が必要だ。
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