原点に返って、政党綱領の策定を
谷藤 悦史
早稲田大学政治経済学部教授、政策研究フォーラム理事長
原点に返って、政党綱領の策定を
民主党は、党の基本理念を明確にする政党綱領の策定を急ぐという。今年の早い時期から、
「綱領検討委員会」が検討を開始し、党大会で正式決定する。遅きに失したと言わなければならない。
綱領が無いことが、民主党の政治的脆弱性の原因の一つであり、それがまた、民主党の政権崩壊を加速させた。
政権を獲得するまでの民主党の政治運動は、不思議なものであった。
政権交代や政権獲得が目的とされ、そのために人集めを中心とした政党連携が優先された。
高度成長後の社会変化に適切な対応策を提示できずに行き詰まりを見せていた自民党政治に、将来の展望を見い出せなくなっていた国民の変化への期待を受けて、
選挙ごとに得票と議員は増大していった。
政権獲得後に何を実行するかについては、与党に対する対抗策が、さまざまなところから寄せ集められた。
自民党と異なる策であれば、何でもよかった。二〇〇九年のマニフェストーとインデックスに提示された一〇〇以上の政策は、その典型であった。
「新しい公共」がどのような理念や原則から導き出されたかの深い理解もなく、政策が無原則に羅列された。
それは、民主党が批判し続けた目先の対応策に終始する自民党の政治と同じであった。
政策に対する深い理解や合意がないから、その実現への思い入れもなく、批判されると、安易な妥協と変更につながった。
それが人と人の対立を呼び、分裂を引き起こした。この状況が改善されない限り、離合集散が繰り返されるであろう。
転換の時なのである。
「中道」の政治の明確化を探るという。
政治の地平が大きく「右傾化」している状況で「中道」を目指しても、日本の政治は「右傾化」を増す。
その逆もまた然りである。それは、政治の状況化を進めるだけで、原則を確立する政治とは言えない。
大切なことは、リベラルな政治とか、民主社会主義の政治とかの原則の確立である。
それがなければ、「中道」の政治と称して無原則に政策が集められるだけである。
政治哲学や政治原則への回帰、対立を恐れない徹底した議論と深い合意が必要である。
それがなければ、中・長期的な政策開発と戦略も、連帯に支えられた持続力ある運動も生まれない。
政党として基本的なことが、民主党に求められている。
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