細野幹事長の「瓢箪から駒」に期待
加藤 秀治郎
東洋大学法学部教授、政策研究フォーラム副理事長
参院選を前に、憲法問題が複雑な展開をたどっている。
一本調子で高まっていた安倍首相の「九六条改正論」に、トーンダウンの兆しが見えるとともに、
民主党・細野幹事長の「集団的自衛権の行使容認」の発言が注目を集めているのだ。
新聞報道によると、民主党幹部は憲法問題で党が分裂するのを回避すべく、必死に党内工作をしている。
九六条改正反対で護憲派をなだめ、集団的自衛権行使容認で改憲派を繋ぎとめる作戦なのか、細野幹事長は二面的な発言を続けてきた。
個人的な見解だが、私にはそんな曖昧な戦術ではなく、思い切った改憲路線への転換の期待が強い。
だが実際には、参院には旧社会党グループが多く残っているし、衆院議員が減った分、彼らに配慮しなければならないから、簡単ではないのだろう、と見てきた。
しかし、憲法記念日のあたりから様相が少しずつ変ってきた。
安倍首相の発言が慎重になってきているのだ。
まず公明党が、選挙協力の放棄をちらつかせ、改憲にブレーキをかけるよう迫ってきた。
また、世論調査で、国民が未だ九六条改正に十分な理解を示していないのが明らかになった。
このあたりが原因だろう。
このように状況が変化してきた結果、細野発言の二面のうち、「九六条改正反対」の方は、強調する必要が薄らいでいる。
残るは「集団的自衛権の行使容認」となるが、細野氏は今後どうするのか。
この問題を放置していると、日米同盟の信頼は保ちにくく、いざという場合、直ぐに米国世論から反発が出るのは必至だから、このまま進めてほしい。
報道各社からアンケートがなされ、民主党議員の立場が注目されているが、旧社会党系議員は、「護憲」に他ならない実態が明らかになっている。
海江田代表は「未来志向の憲法を構想」すると語っているが、それに反対の議員が混じっているのだ。
いつまでも決着を先延ばしにしていてはなるまい。
政権政党たる資格を欠いた第一要因は、このような根本問題で不一致を引きずってきたことなのだから、党再建の第一歩として、問題を避けずに取り組むことを求めたい。
二面作戦の「瓢箪から駒」となるよう期待したい。
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