公明党と連立政権の是非
加藤 秀治郎
東洋大学法学部教授、政策研究フォーラム副理事長
参院選の選挙戦で、公明党が自民党と距離を置く発言をエスカレートさせた。
特に重大なのは、山口那津男代表が突如、「集団的自衛権の行使容認には、断固反対」と明言したことだ。
そこで連立解消の可能性を聞かれると、さすがに、「そういうことを言う前に自民党を説得する」と言葉を濁したが、口調が厳しいものだったことに変わりはない。
七月十一日付『読売新聞』には、連立政権内で「埋没する懸念が党内で高まっており、存在感を示す必要に迫られているようだ」とある。
連立内での「歯止め役」を強調しているというのだ。
原子力発電、外交政策でもそうなのだが、そんな「歯止め役」が必要なものか、しかと考えてみなければならない。
少数意見ながら私見では、昨年の総選挙での民主敗北以後、政界は「五五年体制」への回帰を可能性の一つとして動いているように思われるのだが、
公明党の姿勢はまるで「自民党VS共産党」の構図の中での「中間政党」の立場ではないか? 「独自の立場」とは無縁の「水で割った革新」の立場でしかない。
そんな公明党の影響力がジワリと増しかねないのが、最近の政治情勢である。自民党も含め、公明党に対してどういう立場を取るのか、
各党は議論をつめておく必要があろう。
例えば民主党だが、苦しくとも公明党との協力の可能性を排除して、「自公政権」のアキレス腱たる公明党を批判し、そこに打開のカギを求めていくのかどうかである。
自民党は、議席の上での数の問題だけでなく、選挙協力という重い足枷を抱えているから、公明党に引き摺り回される可能性が大だ。
自公政権は今のままでは、「一時的な連立」というよりは、「半ば一体化した連合勢力」のようになっているのである。
「衆参ねじれ」をあまり重大なことと考えない論者や、「比例代表制」の好きな論者は、結果的に公明党が力を増す現実をどう考えるのか?
本気で考えてもらいたいものだ。
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