終戦七十年を問題先送り社会との「決別の年」に
大岩 雄次郎
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東京国際大学教授、政策研究フォーラム常務理事
この二年間、いつも話題の中心にあったアベノミクスも正念場を迎えている。そもそもアベノミクスノの真骨頂は、
第三の矢の「成長戦略」にある。その意味で、三本の矢と称し、三本を同列に位置付けた問題意識にその限界がある。
つまり、伝統的なケインズ政策の域を出たものとは言いがたい。
事実、第一の矢の「異次元の金融緩和」ばかりが注目を浴び、依然、景気の下支えに「一層の金融緩和」が避けられないという悪循環に陥っている。
そればかりか、第二の矢の財政出動に関しては、十分な政策効果が確認されないままに、財政赤字のさらなる増大を引き起こしている。
その上、第三の矢は、依然不発に終わっている。
現時点では、公共投資や金融政策などのカンフル剤が中心となっているが、中長期的に経済成長力を高めるためには、
規制緩和や環太平洋連携協定(TPP)参加などの構造改革への取り組みが不可欠である。
金融緩和は需要サイドの改革である。
日本経済の再生に必要なのは供給サイドの改革である。
アベノミクスの意義は、需要の引き上げを先行させ、痛みを伴う構造改革を実現する政治的・経済的環境をつくるところにある。
第一と第二の矢、つまり金融と財政政策に頼っている限りでは、極めて難しい政策運営が求められ、バブル崩壊、財政破綻の危険性と背中合わせである。
財政や金融政策は、本質的には対症療法であり、問題の先送りである。
今の日本経済の再生には、供給サイドの改革を通して資金需要を創出する経済構造の抜本的な改革が必要である。
そうした改革こそが、成長戦略である。
これまでも問題の先送りを繰り返してきた結果が、現在の未曾有の財政赤字を生んだのは明らかである。
改革を先送りすればするほど、将来の負担が大きくなることは避けられず、ますます財政赤字の規模は拡大し、
財政再建にはこれまで以上の大幅な増税や歳出削減が避けられなくなる。
経済面のみならず、政治面でも、
憲法改正や外交問題など先送りにした問題は多い。
二〇一五年こそ、日本の再生をかけて問題に正面から取り組む覚悟と実行力が、国民、政治家の全員に求められている。
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