日本政治の再生は、対抗政治勢力を作ることから
谷藤 悦史
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早稲田大学政治経済学部教授、政策研究フォーラム理事長
新しい年が始まったが、日本政治の課題は、内政や外交を問わず山積みである。
昨年末の突然の選挙を経て誕生した安倍政権は、衆議院の過半数どころか三分の二を上回る議席を確保し
選挙結果を受けて、自民党内部でもそれぞれの派閥が勢いを失い、安倍政権になびいているという。安倍政権は、それほど強力なものなのだろう
そうとは言えない。安倍政権の基盤は盤石とは言えない。十二月の選挙がそれを明らかにしている。
国は数百億円の費用を投じたが、投票率は五二・六六%(比例区五二・六五%)と戦後最低に終わった。
多くの選挙民は、選挙をすることに何の意味も見出さなかったのである。消費税延期の是非を問う大義名分が意味をなさなかったことでもある。
自民党は、小選挙区で四八・一%(比例区三三・一%)の得票を確保した。
投票率を前提にすると、自民党の得票率は全選挙民の二五・三%(比例区一七・四%)にすぎな
七割を超える人が、安倍政権に支持を表明していないのである。選挙制度が作りだす歪みで、議席の占有率は七六%になってしま
首相は勝利で政策の正当性が確保されたと喧伝するが、実態はそれとはほど遠く、少数の人々の支持からなる政権(少数政権)である事実は否定できない。
それどころか自民党は、二〇〇九年の総選挙で二七三〇万票を確保して負け、二〇一二年の総選挙で二五六四万票を確保し政権に返り咲き、
昨年の十二月の選挙では二五四六万票と大勝したが、一貫して得票率を減少させている。
党としての衰退が止まらないのである。安倍政権は、人々の期待や願いから遠いところにあると言えるであろう。
しかしながら、それが民主党の支持の拡大につながらないのである。
自民党政治に対する嫌悪や批判の受け皿とならない民主党の貧困でもある。
日本政治は、悲惨な現実に直面している。
対抗勢力を作り上げ、選択肢を拡大しなければ、未来の日本政治を創り上げる構想は限りなく衰退してしまう。
一つの政権が失敗すると、新たな道が塞がれることでもある。政治の可能性を失わないためにも、政権を確保できる対抗勢力を確保しなければならない。
二〇一五年の日本政治の最大の課題である。それは民主党ばかりでなく、国民一人ひとりに突きつけられた課題でもある。
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