共産党との選挙協力にご用心
加藤 秀治郎
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東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長
共産党が野党各党に選挙協力を呼び掛けている。来年夏の参院選で与野党逆転をはたし、先ごろ成立した安保法制を廃止しようというのだ。
その先には連合政権樹立の思惑があろう。
社民党と生活の党はすぐ賛成したが、肝心の民主党は微妙で、岡田代表は「協議には応じる」と慎重だ。
だが、参院選で野党候補者を絞れば勝てる選挙区があるだろうと、単純に期待する候補者もいよう。
しかし、実際にはバーターが成立ちそうな選挙区はゼロに近い。
他の野党が出馬を取りやめ、民主党候補を推す形の外には、野党協力のしようがないのだ。
民主党は代わりに何を提供するというのか。
最低限でも共産党には、政策で当選者を縛る意図があるはずで、安保法制の廃止はその一つにすぎない。
将来の連合政権樹立も約束させられようが、それでいいはずはなく、共産党をよく知る者なら、「検討に値しない」と即座に断わってよかったはずだ。
「米ソ冷戦」が終わって久しいので、共産主義の「原型」を知らない世代が増えているかもしれないので、改めて書くが、共産党とは一筋縄ではいかない党である。
柔軟路線の厚化粧の下、何が「素顔」か分らなくなっているが、「安保法反対」ではこうだ。
前の安保国会だが、「安倍政権の安保法制反対」といった岡田民主党代表と、共産党の間には何も共通点がなかった。
周辺も含めて言うなら、「安倍政権の安保法制反対」と言う人の大半は、自衛隊も日米安保も認めた上での「反対」であった。
民主党も、最左派を除けばそうだったろう。だが共産党は違う。
憲法の「全条項をまもる」と言い、「自衛隊活用」とも言っているが、「自衛隊は違憲」との線を崩していない。
また「第九条の完全実施」と言うから、何のことかとよく文書を読んでみると、「自衛隊の解消」のことだという。
綱領には、日米安保も「廃棄」、米軍基地も「撤退」させる、とある。
「そういうのを『護憲』というのか?」と思うが、それは素人考えなのだ。
こういう具合であり、共産党は我々「素人」にはとても相手にできない党である。
「選挙協力」など、とんでもない話と言うしかない。
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