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月刊誌「改革者」2017年2月号
「改革者」2017年2月号 目次
 

羅 針 盤2月号

            「保守─リベラル」を使わないで表現することから始めよう

               加藤秀治郎 ● 東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長


 『改革者』では政治の言葉につきリレー討論・解説を始めた。まず、日本での近年の「リベラル」の怪しげな用法に注意が向けられ(先月・清滝氏)、 今月はフランスについての解説がある。   米ソ冷戦の終結で急にすたれたが、それまで日本政治の対立は「保守」対「革新」とされた。米国に近い政治・経済体制を選び、 国際政治でも西側陣営に立つことを明確にしていたのが「保守」であった。   対する「革新」は、内容空疎で、なぜ使われたのか理解に苦しむほどだった。 戦前に「革新将校」など、右翼の体制刷新派が自称に使った言葉を、戦後、社会党や共産党が自称に使っていたのだ。   政治言葉で特に重視すべきは、政治勢力を括る言葉で、「革新」も非自民勢力を乱暴に一括りにする言葉であった。 「五五年体制」の発足後に登場した公明党は「保守か革新か」と問われたし、社会党から別れた民社党も無用の混乱に巻き込まれた。   保革の枠に収まらないから、「是々非々」を主張したが、「革新のはずが、なぜ自民党に協力するのか」、「なぜ革新勢力は選挙協力しないのか」と問われ続けた。 政治勢力を括る言葉が、政治協力を促すのだ。   民進党はどうか?─昨年九月の代表選は奇妙なドラマだった。 蓮舫、前原、玉木の三候補とも「保守」を自認、などと報じられた。 私は自分の頭が悪いのか、不安にさえなるほどだった。  冷戦後もマスコミは混乱したままだ。 粗っぽい整理をすると、「保守」はそのままで、「革新」の代わりに「リベラル」を使うようになった。 ─そう思っていたら、実際はもっと流動的で、党内の右派・左派にも使っている。 「保守系の前原は……、リベラル系の赤松らは……」という具合だ。 玉木候補自身は「リベラル保守」政党をつくる、とまで言った。  こういう状況を放置しておくなら、政治の混乱は拍車がかかるだけである。 「リベラル」は英語をそのままカタカナにして、米国の用法に近づけているつもりなのだろうが、それでも奇妙だ。米国嫌いの共産党もリベラルなのか?  以前、英国の用法に則して、自由主義と言っていたのだから、それに近いところに戻してはどうか?  こういう点を整理するためにも、 「保守─リベラル」を使わないで表現することを、始めてはどうか?
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