羅針盤
民進党は憲法論議でイメージ転換を!
加藤 秀治郎
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東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長
安倍首相が憲法改正への意欲を表明した。九条の一項二項を残しつつ、自衛隊を明文で書込みたいという。
三年後施行と期限までつけた。民進党は手続き論で非難しているが、大胆に姿勢を転換し、「責任野党」のイメージにつなげられないものか?
民進党の低迷は旧民主党政権で「政権担当能力なし」と失望されたのが原因だ。「五五年体制」の社会党を思い出させる対応では打開できまい。
憲法改正など基本問題で見識を示してこそ、「政権を託せる党」と見直してもらえるのではないか?
自民党内では、次期総裁を争う石破氏が、あまりにも微温的、と疑問を投げかけている。もう一人、次を窺う岸田外相は逆に、当面は九条改正を考えぬという。
党内調整はこれからで、民進党は時間を稼げ、有難い状況だ。
共産、社民、自由は「改憲阻止」だが、与党・公明党は、安倍提言が同党の「加憲」に近く、「前向きに検討」とした。
野党ながら是々非々で、改憲に前向きな日本維新は「歓迎」だ。安倍提案は明白にこの二党を意識している。
民進党は岐路にある。首相は協力も求めようが、強硬策も覚悟している。共産党との選挙協力が予定され、協力は難しいとの判断からだ
。
民進党は「未来志向の憲法を構想」と綱領で謳っており、「護憲政党」ではない。
岡田前代表の時「護憲」色を濃くしただけだ。
蓮舫代表の発言は玉虫色で、「安倍首相の憲法改正には絶対に反対」だが、「国民の声を何より大事に、憲法を構築していきたい」とも語っている。
昨年九月の代表選での方針は「提言路線」だったから、後半部分に期待したいが、「望み薄」か?
「提言路線」の上、代表選後の野田幹事長の指名で、現実路線に踏込むものと期待したが、これまでは裏切られている。
理由は簡単だ。衆院選での野党協力のためだ。選挙協力見直しで党内論議が高まるのを期待したい。
民進党はどうすべきか? ?共産党や一部マスコミが「自衛隊は違憲」と言うものの、九割以上の国民が自衛隊を評価している。
ならば、どこかに書込むのは常識で、他の点で独自性を出せばよいのだ。「下手に提言などすると、対立軸を打出せない」と言う勢力があろうが、
「自社対決時代」の惰性に捉われた考えだ。清算するべきだろう。
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