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月刊誌「改革者」2018年9月号
「改革者」2018年9月号 目次
 

国会議員とマスコミに猛省を促す

加藤 秀治郎 ● 東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長

 「モリ・カケ」のような問題で国会が空転すると、重要な問題が後回しにされ、「政治主導」よりも、手堅い「官僚主導」の方が良かったような気にさえなってくる。  目立たない問題だが、国会の会期末にバタバタと決まった参院選挙制度改革は、この点で格好のケース・スタディとなる。来夏が参院選で、 手を打たないと一票の格差が三倍を超えたまま選挙となる。最高裁から憲法違反=選挙無効の判決が出かねず、 「忍び寄る危機」であったが、国会はなかなか動かなかった。  選挙無効となれば、国会はたちまちマヒするのだから、所管の総務省はさぞかしヤキモキしたことだろう。 だが、事は政治家に直結する問題だから、「官僚主導」は許されず、政治家に委ねることとなっている。  結局、ギリギリになって法改正がなされたが、内容は「弥縫策」そのもので、「六増ゼロ減」で格差三倍をなんとか回避するだけのものだった。 他に、合区の県の自民党議員を救済する方途が、比例選に盛り込まれた。 自民党の「党利党略」に沿うものとの定番の批判が出たが、それは中らない。無原則なだけだ。  中身はともかく、超党派で早く取組まなければならなかったのだ。 だが、自民党はモタモタし、野党はそれをよいことに放置し、最後に「正論」をただ言って、反対に回った。 お得意の「身を切る改革」を口にし、定数削減を唱えたのだ。 そうなら、なぜもっと早く言わなかったのか?  その間、モリ・カケ問題で時間を浪費していた。 私は与野党の行動パターンにひどく失望した。とても「政治主導」を担える議員とは思われない。  私はそう判断しないが、仮にモリ・カケが重要問題だというのなら、それはそれで特別委員会ででも審議すればよいのだ。  マスコミにも不満がある。 「これでいいのか」という声を上げず、国民の低い関心を放置した。 ニュース・バリューが低いということで、新聞・テレビも「傍観」したのだ。 それなのに、終わってから、「これで良かったのか」と非難してみせた。 どこが「社会の木鐸」か。問題提起はメディアの重要な役割ではないのか?  国会議員とマスコミの両者に猛省を求めたい。
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