出 版 物
月刊誌「改革者」2019年2月号
「改革者」2019年2月号 目次
 

積年の「広報」の怠慢を猛省しよう

加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム副理事長

 竹島、「慰安婦」だけでも大変なのに、「元徴用工」裁判と自衛隊機へのレーダー照射問題が重なり、日韓関係が深刻な事態になっている。 「従軍慰安婦」でいうと、朝日新聞の誤報に始まった問題だが、日本政府は適切な対応を怠り、事実と違うイメージの拡散をくい止められないできた。そればかりか、国内の政治宣伝に押され、政府自ら「河野(洋平)談話」など、妥協的な見解を示してきた。 今では朝日も誤報を認めているが、国内ですら理解は充分でなく、これでは外国で正確に認識されないのも当然だ。諸外国で韓国系市民が運動し、慰安婦像を建てている。中国系市民も応援している。日本国内で反政府勢力がこれに呼応し、政治的に利用している。「元徴用工」問題でも同じ構造が見られる。 こう書いて、「官民あげての対外広報が問われる」ということを結論とするつもりだったが、他にも問題がある。実態が分らないでいる日本国民が多いことだ。 「元徴用工」でいうなら、政府は一九六五年の日韓協定で解決済みといっているのだが、その意味が分らない国民が多い。周辺の人に聞いて、それが分った。 そう思って眺めると、政府の広報も充分でないし、テレビの扱いにも問題が多い。新聞も詳しい記事には書いてあるが、それはまず読まれない。簡単にいうと協定は、両国政府間での資金提供で「完全かつ最終的」な解決にしたのだから、それ以上、個人間での補償はしないこととした、というのだ。 これだけのことだが、簡単にいうのは容易でないし、その過程で誤りが生じかねない。だから、政府発表の文句を繰り返すのが簡単だとなる。そこに日々の動きの報道が加わるから、根本が分らないまま、報道に付き合わされる。 官房長官の記者会見を見ても、つっけんどんで、痒い所に手が届いていない。配付資料にはもう少し詳しく書いてあるのだろうが、記者も自分で咀嚼して見せる力がなければ、発表通り書くのが無難だ。 この部分につき、日韓で解釈の相違が生じていないか、両国政府が協議するそうだが、少し遅すぎないか。沖縄の琉球新報(社説)のように、「韓国元徴用工判決 加害の歴史に向き合って」というトーンで語られるのでは、何を言っても始まらないだろうが……。
ホーム
政策研究フォーラムとは
研究委員会
海外調査
研修会
出版物
リンク
お問い合わせ