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月刊誌「改革者」2020年11月号
「改革者」2020年11月号 目次
 

有志国・地域との連携で、サプライチェーン改革を

大岩雄次郎●政策研究フォーラム常務理事

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、日本企業はグローバル・サプライチェーンの見直し、つまり「集中生産による経済性・効率性」と「供給途絶リスクへの対応力」のバランスを今後どのように考えていくべきかが喫緊の課題となっている。  ただ、この問題は、「コロナ以前」からの課題であり、@第四次産業革命の進展、Aグローバル化の展開と保護主義の高まり、 Bソーシャルビジネスの加速、という三つの潮流により、わが国の製造業がこれまで以上に高度で複雑な問題に直面する大変革期を迎えていることが指摘されている(『二〇一九年版ものづくり白書』)。  「コロナ後」の世界では、多くの識者が指摘するように、脱グローバル化の加速、国際協調の停滞、米中対立の激化の潮流が予想され、グローバル・サプライチェーンの見直しは不可避である。  これらの潮流が各国の通商政策に及ぼす影響を考えると、自国の経済安全保障の視点から、グローバル化のもたらすリスク回避・軽減のための国家の介入が強化されることは予想に難くない。 つまり、自国第一主義と多国間協調主義とのせめぎ合いとなる。  二〇一九年の日本の対中輸出は一四・七兆円で、輸出全体に占める割合は一九・一%。輸入は一八・四兆円で、輸入全体の二三・五%を占めた。 日本は、中間財の輸出入における対中依存度が主要先進国の中で突出して高い。 中間財輸出に占める中国向け輸出の割合は、二位の米国の八・八%に対して、二四・七%、また同輸入については、二位の米国の一六・三%に対し、二一・一%に達している。 以前から、人件費高騰のため「中国+1」戦略によるリスク回避が進められてきたが、十分な効果は上がっていない。  今回、コロナ・ショックによるサプライチェーンの機能不全を受けて、生産拠点等を日本国内に整備する場合の経費を補助する「国内投資促進事業費補助金」(二二〇〇億円)等が整備され、 応募総額は約一兆七六四〇億円に上っている。  日本企業の脱中国の試みは、日本の産業界全体のリスク管理の問題として、早急に官民を挙げて取り組み、具体的な筋道をつけるべきである。 国内回帰策に加えて、リスクを分散するためには、世界貿易機関(WTO)有志国・地域、特に欧米台韓豪などの先進国との連携強化を図り、 世界各国に生産拠点や取引先を配置し、リスクの分散化を図る必要がある。
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