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月刊誌「改革者」2021年11月号
「改革者」2021年11月号 目次

羅 針 盤(11月号)

衆院議長に国会改革を望む

加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム常務理事

 誰になるか分からないが、新衆院議長に国会改革への着手を要望しておきたい。  というのは前任者・大島理森氏が引退のインタビューで、重複立候補の是正を促す発言をしていたからだ。同氏は一五年から二一年まで、歴代一位の在職記録を誇ったが、それでこの発言だったから、がっかりした。  選挙制度の重複立候補については、総裁選で野田聖子候補も語っていたが、誰でも口にしやすい素朴な廃止論が多い。私は賛成しないが、きちんと議論しての廃止なら、認めてもよい。だが、重複は義務ではないから、自民党だけでも直ぐにやれる。他の党に構わず、自民は全候補を小選挙区単独とすればよいのである。  六年半もの在職で「これだけ?」との印象で、問題は他にもあるでしょう、と言いたくなる。特に国会改革にはぜひ触れてもらいたかった。  国会が低調な最大の原因は、党議拘束の運用にある。国会での議決で、政党ごとに賛否を決め、まとまって投票するものだが、誤解があり、廃止論も多い。だが党議拘束それ自体は議院内閣制と一体のもので、別に悪くない。問題は我が国での慣行であり、法案提出の前に与党が細部も含め賛成と決めていることだ。  あとは国会では、与党は法案を成立させるだけ、野党は反対だけとなり、審議が形式化するのも当然だ。野党は政府・与党の不正をつき、与野党対決を演出するというワンパターンはここに起因する。だが、これも慣行であり、公明党の協力を得れば、自民党はすぐにでも改革に着手できる。  具体的には、党議の決定を、委員会での審議の後、採決の直前にするだけでいい。法案修正の余地が残り、与党議員も委員会で内容のある発言ができる。野党も法案の中身に関与できるから、一変するのだ。  無論この改革は、直ぐに参議院ではどうするのか、という問題に繋がるから、簡単ではない。あとは衆参を超えた検討が必要であり、国会改革の審議会を新たに設けることを提唱したい。
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