立憲民主に「脱皮」を期待する
加藤秀治郎●東洋大学名誉教授、政策研究フォーラム常務理事
このところ北朝鮮の異常な頻度でのミサイル発射や、ロシアのウクライナ攻撃の激化など、国際情勢は緊迫の度合いを深めている。そんな中、国内では旧統一教会問題や物価上昇などで、岸田内閣の支持率が急に低下している。
野党の「好機」というムードがあるようだが、単純ではない。
まず「五五年体制」を正確に認識しておきたい。一九九三年の総選挙で「崩壊」したとされる政党制だ。一九五五年に自民党と社会党の「変則」二党制が誕生したのだが、自民党がいつも与党で、社会党は「万年野党」だった。
総選挙で議席の増減はあっても政権交代はなく、英米のような「二大政党制」ではなかった。
その後、変化の兆しがあったが、二〇一五年前後の平和・安保法制以来、野党はすっかり「先祖返り」し、この「五五年体制」での社会党に近い行動パターンに戻っている。手頃な材料を得て、与党を追及するだけで、議席増を狙うパターンだ。
だが、これでは政権につけない。政権担当能力を示さないことには政権奪取にならないのだ。
大事なのは、民主党政権の「失敗」に学ぶことだ。大方の有権者には当時の記憶が残っており、政権を任せられる勢力かどうかを注視している。内閣支持率が下がり、野党に「好機」が訪れたような印象が出ても、せいぜい議席増にとどまる。「引いてしまう」有権者が多いのだ。
あのような野党には任せられないとなって、自民党内の他の勢力に期待を移してしまう。「岸田がだめなら〇○」という、「疑似政権交代」で幕引きとなるのだ。これこそ、「五五年体制」そのものだ。
自民党がいろいろ問題を抱えているのはその通りであり、疑惑追及と、再発防止のための改革は、是非やってほしい。だが、それと併せ「次は我々に任せてくれ」と言える態勢づくりが肝心だ。
厳しい安保環境に見合う政策が必要なのだ。幸い岡田幹事長が、その旨の発言をしている(十月八日産経)。この辺りが格好の「リトマス試験紙」であり、一部の「リベラル」を自称する「新聞」世論に流されてはならない。
十月上旬のNHK世論調査でも、防衛費増額「賛成五五%」「反対二九%」となっている。プーチンと金正恩は影響力絶大な反面教師のようだ。 |