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月刊誌「改革者」2023年1月号
「改革者」2023年1月号 目次

長期の戦略と短期の現実的政策を

谷口洋志●中央大学教授、政策研究フォーラム副理事長

 ロシアは、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大阻止を名目としてウクライナに軍事侵攻し、侵略戦争を始めた。ロシアの仕業が一国の不法な軍事行動という評価で終わっていたならば、別の展開があったかもしれない。  しかし、一国だけの問題で片付けられないことは、国連の場で中国やインドがロシア非難を支持せずに毎回棄権を選んだことや、シリアや南アフリカなど反米欧・非米欧諸国の多くが賛成しなかったことに現れている。しかも残念なことに、国連の場で一貫してロシア非難に賛成した国が必ずしも全体の過半数を占めていないのだ。  こうした国際情勢の不安定や不確実性の高まりに加えて、世界各国はコロナ禍が続く中で物価上昇や農産物・エネルギーなどの経済安全保障問題を抱えることになった。日本は、ロシア非難勢力の一角を占めながらも対露経済制裁では是々非々路線を進めているように見える。良く言えば現実路線、悪く言えば弱腰路線だ。  ドイツも日本と似た路線をとっている。ロシアとの天然ガス貿易や対中宥和路線などドイツの政策や行動については批判も多いが、ここでは、何がそうした政策や行動をとらせているかを学ぶ必要がある。それは、現在や将来の産業活動や国民生活を根本から支える資源・エネルギーをいかに安定確保するかという問題に関わる。  この問題に対して、供給源の多様化、代替資源・エネルギーの開発・利用や消費量自体の削減が必要であることは誰もが知っているし、日本も実際にそうした認識のもとで動いてきたことは事実だ。しかし、これらは解決に時間を要する問題であり、明確な理念のもとで長期を見通した戦略と短期の現実的政策を必要とする問題である。  中国の一帯一路構想は軍事戦略の一言で片付ける向きもあるが、この見方に欠けているのは、軍事的意図やその背景要因は何かを論じていないことだ。中国のアジア・アフリカ・中南米戦略を見れば、中国が資源・エネルギーの安定確保をいかに重視しているかは明らかだ。  我が国が資源・エネルギー問題に対処するためには、国際情勢や国際経済動向(戦略物資を含む)を見据えた長期の戦略と、それを基礎とした毎期の現実的政策が不可欠であることを改めて強調したい。
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