素晴らしい未来の幕開けを
谷口洋志●中央大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長
二〇二四年が始まった。今年も例年のように、新年の挨拶を交わし、おせち料理やお雑煮をいただき、初詣に行くところから始まるのだろうか。
北陸富山にいた少年時代、親から自分の年齢の数以上お雑煮で餅を食べないといけないぞと言われ、年々歳を重ねていくことでお餅の数が増えていくことにおびえながらも、なにか挑戦心を植え付けられたような気分になったものだ。
物流業界の二〇二四年問題や後期高齢者が急増していく二〇二五年問題が立ちはだかるなか、われわれは一体これらの問題をどのように解決していくのだろうか。「適切に対応する」「緊張感を持って見守る」ことだけはやめてもらいたい。こうした無意味で無責任な言葉を公然と発するために小さい時から勉強を積み重ねてきたわけではなかろう。
今年は、こうした無意味・無責任な言葉を連発する連中を表舞台から葬り去り、その代わりに、真剣、深刻に問題に取り組み、知恵を絞り、明るい未来を語ることのできる人に登場してほしいものだ。そのためには、しがらみにとらわれない新鮮な感覚、あるいは鋭い現実感覚を持った多数の青壮年や女性が必要だ。日本を変えることができるのは、そうした若い世代と、これまで十分な活躍の機会を与えてもらえなかった人たちなのだから。
そして、今年は、他力本願の神頼みでなく、自分たちの力で素晴らしい未来の幕開けにしてもらいたいものだ。その試金石となるのが、春闘における賃上げ率の高さであろう。
政府から現金給付を受けても、その財源が公債金収入である限り、それは将来世代を犠牲にして現在世代が利益を受けるだけで、将来の見通し改善には全然寄与しない。政府からのバラマキをあてにするという他力本願では将来展望は何も改善しない。
実質賃金がプラスの方向で向上していく賃上げ(所得)を継続的に実現していくことではじめて素晴らしい将来展望が開ける。経済の動向を左右する個人消費は、長期的に期待できる実質所得に依存するというのが正統派の教えである。頑張れ、若い世代、女性、現役世代。頑張れ、退職世代、毎日外に出て生きている喜びを実感し、いつまでも青年気分を忘れるな(と自分に言い聞かせる)。
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