終わり悪ければすべて悪し
谷口洋志●中央大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長
長期にわたって日本の政治を牽引してきた自由民主党の地位が揺らいでいる。過去に何度も日本の歴史に泥を塗ってきた自民党だが、裏金問題に端を発する今回は、実力者の失脚と総入れ替えが大規模に進んでいる。もっとも、真の黒幕と思しき老害政治家にまでは手が回らないようだから、善良な国民の不満と怒りは収まることはない。
特に納得できないのは、数十年前から危険視されてきた悪徳宗教の解散命令請求を行った政府の代表者がその宗教団体と深い関係にあったことだ。その宗教団体から推薦をもらって政策協定をしていたというから、開いた口がふさがらない。
こういう人物が文部科学行政のトップをつとめ、しかも悪徳宗教との関係を国会で追及されると、「記憶にない、覚えていない」を連発する。甚だしい無能と無責任の露呈である。しかし、首相は大臣には何の問題もないと考えているようだから、無能と無責任は政府与党の特徴なのか。官僚が作った読み仮名付きの文書を読み上げることや選挙運動での名前の連呼しかやってこなかったツケなのか。
こういう連中が日本を代表する地位にいること自体、日本人として恥ずかしい。即刻、退陣、引退して、自分のこれまでの人生を反省し、最期くらいはまともな生き方をすべきだろう。そして生徒・学生時代に学んだはずの倫理・道徳の内容を再度学習すべきだ。
おそらく、超高学歴の文科大臣にとっては、生徒・学生時代にやった勉強とは、試験に出る倫理・道徳の内容であって、倫理・道徳の実践ではないということなのだろう。倫理・道徳の実践は試験対象でなく、得点・加点対象にならないので、学習価値ゼロだったのであろう。人間にとって最も基本的かつ最重要な倫理・道徳の学習を怠った人間が、日本の教育行政を担うというのは、日本最大の恥であり、ブラックジョークでしかない。
日本には、「終わり良ければすべて良し」という言い方がある。本来は結末や締めくくりが重要だという意味だが、有力政治家の失態をみると、「終わり悪ければすべて悪し」と言いたくなる。金融政策の正常化が当面の経済的課題であるとすれば、政治の正常化(政界の浄化)は喫緊の政治的課題である。
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