選挙と選挙制度
谷口洋志●中央大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長
二〇二四年は、トップを選出する選挙や総選挙が目白押しである。
一月の台湾総統選挙を皮切りに、二月のインドネシア大統領選挙、三月のロシア大統領選挙、四月の韓国総選挙、五月の南アフリカ総選挙、六月のメキシコ大統領選挙と欧州議会選挙、四?六月のインド総選挙、六?七月のイラン大統領選挙、七月の英仏の総選挙と続き、十一月には米国大統領選挙も控えている。このほか、気になる選挙として、四月のスロバキア、ソロモン諸島、モルディブでの総選挙があった。
世界各国の大統領選挙や総選挙において焦点となるのは、政権維持か政権交代かという問題に加えて、対米・対露・対中への姿勢と、過激な主張を展開する極右とされる勢力がどこまで台頭するかであろう。
イランや英国では改革派や野党が勝利し、フランスでは与党連合が第一党の地位を失った。親ロシアのインドと南アフリカでは、与党勢力が第一党となったが、従来の過半数を失った。スロバキア・ソロモン諸島・モルディブではロシア・中国寄り勢力が勝利した。
茶番のロシア大統領選挙を別とすれば、英国を除くほとんどの国では連立政権を余儀なくされ、政権交代が起きたとしても不安定な政治が続くと予想される。こうした状況は日本にとっても他人事ではなく、これまで以上にどのような政策を打ち出すのか、どこと誰と連携するのかが重要な問題となる。
七月七日の東京都知事選挙を含めて世界の選挙結果をみて思ったことは、全体的にみて比例代表制に近い選挙結果になっていることである。比例代表制の特徴は、各政党が得票率に応じた議席数を得て、少数政党も議席を獲得することができることだ。
もう一つ抱いた感想は、世界には単純多数決を重視する国とそうでない国があることだ。イランの大統領選挙やフランスの総選挙では二回選挙が実施され、決選投票では過半数を得た(単純多数決を制した)候補者が選出される。
これに対し、日本では相対多数決が中心で、最多得票の候補者が勝利する。しかも立候補者が多くて投票率が低いので、投票者ベースでは過半数が得られず、有権者ベースでは二?三割の支持で選出されてしまうことだ。日本の選挙制度は、多数者の意思や国民の総意を反映させるという意味では極めて不完全な制度である。
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