進行するデジタル・プラットフォーム規制
谷口洋志●中央大学名誉教授、政策研究フォーラム理事長
最近、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの頭文字)に代表されるデジタル・プラットフォームへの規制が強化されている。
デジタル・プラットフォームとは、インターネット上で多数の企業や個人が依存する基盤(インフラ)的サービスまたは、そうしたサービスを提供する事業のことである。ただし、規制対象のデジタル・プラットフォームには、マーケットプレイス、ソーシャル・ネットワーク(SNSやメッセンジャー)、コンテンツ共有プラットフォーム、アプリ・ストア、オンライン旅行・宿泊プラットフォーム、検索エンジンなどが含まれるので、米国企業だけでなく欧州や中国の企業も対象となっている。
ここで注目したいのは、デジタル・プラットフォームには多数の義務や行動規制、禁止事項や遵守事項が求められていることである。例えば、EUのデジタル・サービス法では、児童向け広告の禁止やユーザーへの情報提供義務が求められており、英国のデジタル市場・競争・消費者法では、定額(サブスク)契約を行う前に消費者により明白な情報を提供することや消費者が契約を容易に打ち切ることができることを保証することなどを求めている。
ここには、何者にも邪魔されない、当事者同士での自由な契約といった形式的な自由よりも、消費者を不正から守ることで消費者の利益を確保するという姿勢が明確に打ち出されている。
想像を絶する膨大な資産(フォーブス誌ビリオネア・ランキング世界第一位)を背景に今や極右の戦士となったイーロン・マスクが支配するXも、悪意ある行為者や、ユーザーを欺く者を放置しているとして、デジタル・サービス法違反に問われている。違反が認定されれば、Xには世界年間売上の最大六%の罰金が科される。
欧米日で進行しつつあるデジタル・プラットフォーム規制強化の動きは、守られるべきは、加害者による表現の自由か、それとも表現の自由のもとで誹謗中傷や人権侵害を強いられる被害者の生きる権利かを問うている。
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